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星落秋風五丈原
レビュアー:
軟体動物的直観を持つ上司と 蘊蓄を滔々と語る部下は最強!という話
 もう冒頭からダングラールとアダムスベルグ署長のコンビがかます。かましてくれる。

 なぜか乗った飛行機が墜落する夢ばかり見るダングラールは、カナダの研修から逃れたくて仕方がない。アダムスベルグは折あしくボイラーが故障したのは、行きたくないダングラールの仕業ではないかと考える。ちなみにカナダ研修はちゃんと行く。だが行ったら行ったで大変なのだ。それはまた別の話。
 
 アダムスベルグのダングラール評
彼の教養は無限で、ときには有害でさえある。というのは、彼の場合、突然、知識が爆発するのだ。しかも、その発作は頻発し、抑えようもない。馬がブルっと鼻嵐を吹く、そんな感じだ。あまり使われない言葉とか、曖昧な表現など、ちょっとした刺激があると、たちまち爆発し、滔々たる博識の弁舌に発展する。それが必ずしも時宜を得ていない

 要はオタクアンテナにひっかかるととめどなく喋ってしまうという事ですな。一方夢見る警察署長という二つ名(何だそれは)を持つアダムスベルグは、ダングラールが事件の報告書を作成した後で犯人は別人だと言ってしまうようなKY要素の持ち主。で、こちらがダングラールの署長評
ダングラールにとっては署長の直感は原始時代の軟体動物のようなものだった。手足もなければ、上下もわからない、澱んだ水に浮かぶ半透明体。(中略)署長の軟体動物的直観はどんな予知能力の恩恵か知らないが、あらゆる精密な論理にも挑み、これまで何度も的中している
そもそも軟体動物の直感って褒めてるのかけなしてるのかよくわからん。

そんな二人は会えば喧嘩。
「せっかく彼女とのデートをセッティングしたのに自分でぶちこわしにして!」
「そんなの君に関係ない」
痴話げんかか。

 なのに、夜中にアダムスベルグに呼び出された時のダングラールの気持ちときたら
アダムスベルグはさっきの彼の無礼を根に持たないばかりか、常軌を逸した愉快な場面を用意してくれたのだ。ダングラールの心は上司に対する感謝の念でいっぱいになった。アダムスベルグだけだ、平凡な日常から突飛な展開を引き出し、奇想天外なひらめきを見せてくれるのは。それだから、真夜中を過ぎて眠りを醒まされ、凍てついた冬の街に引っ張り出され、ネプチューンの前に立たされても、ちっともかまわない
いや、かまえよ。
なぜだ、なぜ喜ぶ。同じ日に怒ってたろうダングラール。なぜ、寒い冬の真夜中に「この絵について説明しろ」と無茶ぶりされて「ハデスとネプチューンとゼウスは兄弟で云々」と蘊蓄を披露するのかダングラール。ツンデレか。

 とにかく変な所に拘るダングラールといやなんでそういう方向に行っちゃうの普通は違うだろのアダムスベルグが登場すると本筋がぶっとぶ。ここまで書いて大分尺を取ってしまった。アダムスベルグが弟を酷い目に合わせた名物判事をずっと追っていくのが本筋。ほらメインプロットが一行で済んじゃったよ。どうするのこれ。

フレッド・ヴァルガス作品 アダムスベルグ警視シリーズ
裏返しの男
三聖人シリーズ
論理は右手に
彼の個人的な運命
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2326 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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