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整然の真逆を行くミステリー。混沌とした中、ラストで納得感を持たせるのはさすがか。
先日読んだ「天狗」のシリーズをたまたま入手。出版は「鬼」、「河童」、「天狗」の順だとか。また著者の百鬼夜行シリーズのスピンオフのような作品だという情報もあり、登場せずに名前だけ出てくる人物の、雲をつかむような情報と、「百鬼拾遺」というタイトルにも妙になるほどと思ったりした。
昭和29年、千葉の田舎の川で次々と水死体が上がる。死体は頭部に打撲痕があり、また意図的にベルトなどが切られ、いずれも尻を出した状態だった。折しも男風呂ののぞき魔事件があり、尻を触ったり尻子玉を抜くという河童伝説を思い出させる状況だった。実家が千葉にある女子高生・呉美由紀は現場付近を訪れ、新たな水死体を発見する。
さてこの話、最初は元警察官で探偵事務所に勤める益田が粘っこい口調で事件のあらましを語り、関係者も多く、すっきりしないうちにどんどんと展開していく。まあ間違いなくわざと混沌とさせていて、ラストの謎解きを際立たせている。また河童伝説は詳しい変人の先生も出て来てから騒ぎの内に色々な知識が並べ立てられる。先の戦争前後の限界集落と河童の話が相まっておどろおどろしい中に、コミカルさと、黒さが垣間見える。
この作品の前に読んだ宮本輝「草花の静かな誓い」が、現代アメリカのセレブ社会を舞台にして、ごく整然としたミステリーだったから、真逆の構成に笑ってしまったというか。「百鬼夜行」のファンがニヤッとする楽屋落ちネタも多いようだ。
天狗、鬼とも物語が奥に内包している社会状況などはどうもしっくりこないものがあるのだが、やや衒学的でありながらもエンタテインメント・ミステリーとして立っているのは間違いない。
ちょっと見分かるような分からないような複雑な事件を作り、漂う妖しい雰囲気の中、納得感ある謎解きを提示して見せるのはさすが、という感に今回打たれた。でも残る「鬼」を探して読むほどではないかな。
昭和29年、千葉の田舎の川で次々と水死体が上がる。死体は頭部に打撲痕があり、また意図的にベルトなどが切られ、いずれも尻を出した状態だった。折しも男風呂ののぞき魔事件があり、尻を触ったり尻子玉を抜くという河童伝説を思い出させる状況だった。実家が千葉にある女子高生・呉美由紀は現場付近を訪れ、新たな水死体を発見する。
さてこの話、最初は元警察官で探偵事務所に勤める益田が粘っこい口調で事件のあらましを語り、関係者も多く、すっきりしないうちにどんどんと展開していく。まあ間違いなくわざと混沌とさせていて、ラストの謎解きを際立たせている。また河童伝説は詳しい変人の先生も出て来てから騒ぎの内に色々な知識が並べ立てられる。先の戦争前後の限界集落と河童の話が相まっておどろおどろしい中に、コミカルさと、黒さが垣間見える。
この作品の前に読んだ宮本輝「草花の静かな誓い」が、現代アメリカのセレブ社会を舞台にして、ごく整然としたミステリーだったから、真逆の構成に笑ってしまったというか。「百鬼夜行」のファンがニヤッとする楽屋落ちネタも多いようだ。
天狗、鬼とも物語が奥に内包している社会状況などはどうもしっくりこないものがあるのだが、やや衒学的でありながらもエンタテインメント・ミステリーとして立っているのは間違いない。
ちょっと見分かるような分からないような複雑な事件を作り、漂う妖しい雰囲気の中、納得感ある謎解きを提示して見せるのはさすが、という感に今回打たれた。でも残る「鬼」を探して読むほどではないかな。
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読む本の傾向は、女子系だと言われたことがあります。シャーロッキアン、アヤツジスト、北村カオリスタ。シェイクスピア、川端康成、宮沢賢治に最近ちょっと泉鏡花。アート、クラシック、ミステリ、宇宙もの、神代・飛鳥奈良万葉・平安ときて源氏物語、スポーツもの、ちょいホラーを読みます。海外の名作をもう少し読むこと。いまの密かな目標です。
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- ページ数:0
- ISBN:B07RWPM61S
- 発売日:2019年05月24日
- 価格:752円
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