紅い芥子粒さん
レビュアー:
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七人の少年を殺した殺人者と、その弁護人。二人は、三十年前の台湾で、十三歳の夏を共に生きていた……
2015年11月、アメリカのある街で、一人の男が逮捕された。未成年者誘拐未遂。
彼は、七人の少年の殺人者であることを自供した。
物語は、連続殺人者とその弁護人の一人称で語られる。
二人は三十年前、台湾で、十三歳の夏を共に生きていた……
1984年、台北のある街。ガジュマルの木がやたらに茂っていた夏。
ユンとアガンとジェイは、同じ中学の一年生だった。
ユンの母親は、ユンの兄の死がきっかけで、重いうつ病になった。
アガンの両親はそれぞれが浮気していて、いつ別れてもおかしくない。
ジェイは、継父に毎日のように殴られていた。
平穏とは言えない「家庭の事情」がそうさせるのか、三人の少年は、いつもつるんでいた。
暴力的で、危険な友情だった。
二人一組になって、一人を殴った。血だらけになり、立ち上がれなくなるまで。
三人は、ブレイクダンスに夢中になり、練習を重ねて、ストリートで踊った。高校生のグループの縄張りを侵し、威嚇されて、命からがら逃げかえったこともある。
ジェイは、ケンカが強く、ダンスが上手で、頭もよかった。
アガンは、太っていてケンカが弱く、ダンスも下手で、頭もいいとはいえなかった。
ユンは日本の漫画が好きで、自分でも絵を描き空想のヒーローを作り上げていた。
13歳といえば思春期。
ジェイが同性への愛にめざめた。男どうしの愛なんて認めない継父に、こっぴどく殴られ、入院するほどの大ケガをする。
ジェイが退院した日、ジェイの継父を殺そうと言い出したのは、ユンだったかジェイだったか。
ほんとうは、だれかに止めてほしかったのかもしれない。
やるか、やらないか。アガンを含む三人で占いのようなことをした。
結果は、決行。手段は、毒蛇で……
少年たちは、引き返すことのできない坂道を、転がり落ちていった。
弁護士の「わたし」と、三十年前の少年の「ぼく」。
同一人物と思って読んでいたのだが、小説の半ばで、ちがうことに気づき、ガクゼンとした。
連続殺人者が、だれなのかわからなくなり、前にもどって読み落としがないか何回も確かめた。
けっきょく、読み進んでいくうちに、三十年前に「ぼく」の身に起きた決定的な惨劇を知ることになる。
毒蛇を売る店や、街角の人形使い。台湾の街の光景や風俗の描写も楽しめる。固有名詞の漢字の読みは、初出のルビだけでは覚えきれず、自己流に読んで飛ばした。
おもしろかったけれど、こわかった。青春というにはまだ幼い少年たちの、生と死を分ける塀の上を歩くような日常が。
彼は、七人の少年の殺人者であることを自供した。
物語は、連続殺人者とその弁護人の一人称で語られる。
二人は三十年前、台湾で、十三歳の夏を共に生きていた……
1984年、台北のある街。ガジュマルの木がやたらに茂っていた夏。
ユンとアガンとジェイは、同じ中学の一年生だった。
ユンの母親は、ユンの兄の死がきっかけで、重いうつ病になった。
アガンの両親はそれぞれが浮気していて、いつ別れてもおかしくない。
ジェイは、継父に毎日のように殴られていた。
平穏とは言えない「家庭の事情」がそうさせるのか、三人の少年は、いつもつるんでいた。
暴力的で、危険な友情だった。
二人一組になって、一人を殴った。血だらけになり、立ち上がれなくなるまで。
三人は、ブレイクダンスに夢中になり、練習を重ねて、ストリートで踊った。高校生のグループの縄張りを侵し、威嚇されて、命からがら逃げかえったこともある。
ジェイは、ケンカが強く、ダンスが上手で、頭もよかった。
アガンは、太っていてケンカが弱く、ダンスも下手で、頭もいいとはいえなかった。
ユンは日本の漫画が好きで、自分でも絵を描き空想のヒーローを作り上げていた。
13歳といえば思春期。
ジェイが同性への愛にめざめた。男どうしの愛なんて認めない継父に、こっぴどく殴られ、入院するほどの大ケガをする。
ジェイが退院した日、ジェイの継父を殺そうと言い出したのは、ユンだったかジェイだったか。
ほんとうは、だれかに止めてほしかったのかもしれない。
やるか、やらないか。アガンを含む三人で占いのようなことをした。
結果は、決行。手段は、毒蛇で……
少年たちは、引き返すことのできない坂道を、転がり落ちていった。
弁護士の「わたし」と、三十年前の少年の「ぼく」。
同一人物と思って読んでいたのだが、小説の半ばで、ちがうことに気づき、ガクゼンとした。
連続殺人者が、だれなのかわからなくなり、前にもどって読み落としがないか何回も確かめた。
けっきょく、読み進んでいくうちに、三十年前に「ぼく」の身に起きた決定的な惨劇を知ることになる。
毒蛇を売る店や、街角の人形使い。台湾の街の光景や風俗の描写も楽しめる。固有名詞の漢字の読みは、初出のルビだけでは覚えきれず、自己流に読んで飛ばした。
おもしろかったけれど、こわかった。青春というにはまだ幼い少年たちの、生と死を分ける塀の上を歩くような日常が。
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読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:0
- ISBN:B087YZ39F4
- 発売日:2020年05月08日
- 価格:770円
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