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ぱせりさん
ぱせり
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若い日の小沼丹さんに、少年少女のためのこんな作品群があったのか
サブタイトルは「小沼丹未刊行少年少女小説集・青春篇-」
若い頃の小沼丹に、少年少女のためのこんな作品群があったのか。
書かれた年代は1953年から1960年くらいまで。
この本は、「Ⅰ」「Ⅱ」の部に分けられていて、「Ⅰ」は、学習雑誌『中学時代』に六カ月間にわたって連載された連作『青の季節』が、「Ⅱ」には、おもに『女学生の友』や『それいゆ』などに掲載された少女小説七編が載っている。


『青の季節』は、母の病気療養の間、田舎の叔父のもとに預けられた中学生が、友人たちと喧嘩をしたり冒険をしたりの日々の物語。
「野ゆき山ゆき海べゆき……」
佐藤春夫の詩『少年時代』(引用されていた)が似合う少年たちのしょうもなくて少し甘酸っぱくて、輝かしい日々だ。
東京などの都会と田舎の距離感、生活の違いがはっきりしていること。男の子たちの集団に女の子がひとりだけ混ざっていて、この子が、母・姉的な役割(冒険に混ざるよりも「馬鹿なまねはおよしなさい」というような諫め役)になっていること。また、親友の父は戦死していること。
六十年前の物語なのだった。


「Ⅱ」の短編は、少女雑誌に載ったものである。男女の恋愛以前の淡やかな慕情、冒頭から感じる悲劇の匂いなどが、特徴だろうか。
異国情緒のある港町、高原の別荘地。お手伝いさんのいる家。ご近所は外国(西洋)の人、美少女。


「Ⅰ」も「Ⅱ」も、主人公たちは、この牧歌的な景色の中でかりそめの暮しをする旅人、お客さんだ。もともと彼らは都会の裕福な家庭の子女なのだ。
安定のワンパターンではあるが、私も子どもの頃にこういう雰囲気、憧れたなあ。
当時の読者たちも、違う世界の窓を覗くような眩しさで楽しんでいたのだろう。
初読であるにもかかわらず、どの物語も懐かしく感じた。
少女時代の憧れの場所や人に再会したような気持ちだった。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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