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まるでテレビドラマのような型破りMBA公務員による町興しストーリーであるが、主題は巷に溢れている過去の偉人の同じようなものよりもはるかに生々しく説得力のあるリーダーシップ論である。
息子が6年間福岡の大学に在籍していたことから半年に一度ほど福岡を訪れていました。住んでいたのが丁度福岡市の西、糸島市に入ったところであり、そこのビジネスホテルによく宿泊していました。糸島市の最初の印象は田舎者の私が言うのは気が引けるのですが福岡市のそばにも関わらずかなり田舎というものでした。広い田園風景の遠くの丘に見える九大の伊都キャンパス、幹線道路こそ交通量も多いですが少し脇道に入れば途端に静かな町、海辺が美しい玄界灘。
しかしこの町のポテンシャルは相当のものだろうなという印象も同時に持ったのです。車で30分も走れば西日本屈指の都会である天神・博多があり、九大の伊都キャンパスには各学部が続々と移転し、半島の美しい風景と魅力的な食、インバウンドの拠点としてビジネスホテルに溢れかえる中国人・韓国人たち。まあしかし息子の大学進学がなければ知らなかった町であり認知度はかなり低いままに時が過ぎていくのだろうと思ったものです。
ところがそれから妙に糸島という言葉を耳にすることが多くなってきたのです。ネットや雑誌のみならず女性の友人からも糸島の魅力を聞かされたり。凄く不思議に思っていたのですがこういう訳だったのですね。この本の著者である糸島市の職員の岡さんを中心とする糸島ブランド戦略が実を結んでいたということです。
本書は公務員でありながらMBAを取得している岡さんがMBAで学んだ手法を駆使しながら単に観光や物産販売を振興するといったレベルではなく、糸島市に移住したい、起業したいと思われ人口増加を目論むといった壮大な夢とその実現、岡さん自身の紆余曲折の半生を盛り込んだ熱量の高い内容となっています。
具体的な内容としては糸島市職員のみならず女子高生を巻き込んでの「糸島マーケティングモデル」による「糸島産ふともずく」の全国への展開、そして第2弾として天然真鯛漁獲量日本一を活かしての「だしスープっ鯛」、第3弾として糸島産メンマを使った油菓子「博多BARIMEN(バリメン)」と矢継ぎ早に糸島ブランドを構成する案を繰り出していきます。
また、産直施設やカキ小屋などの地産地消に拘らず農作物や水産物の巨大消費地の福岡市に向けて糸島産食材を売り込むために、シェフと生産者を直接結び付けることで付加価値を高めていくなど、データを客観的に分析することにより的確な戦略のもと糸島産を単なるモノに留まらないブランドに育て上げることに成功しています。
そして、利害関係の調整がある意味最も難しいと考えられる産学官連携についても折れない心でやり遂げています。本書の中にはMBAで学んだ手法やデータをふんだんに使い説得力のある戦略を立てていますが、私は岡さんの成功におけるその部分の貢献は幹ではなく枝葉だろうと思っています。結局のところ戦略が成功する最大のカギは岡さんの人間力だろうと思います。
何かやろうとするときには必ず抵抗勢力が出てきます。これには二つあって一つは組織内部のもの、もう一つは外部の利害関係者です。どちらも厄介ですが、役所や保守的で昭和から続く大企業では特に内部的に難しい。事実上身分保障が堅固で人事制度が下方硬直的な組織、つまり成果を上げられないからという理由だけで降格となることがほとんどない組織においては、何もしないことが最も合理的な行動と考える人が出てきます。降格となる場合には大きな失敗という客観的な状況が伴いますので何もしなければ失敗はなく給料という既得権益が守られるという考えです。
岡さんは沢山の先輩・上司に助けられたと本書で語っていますが、多分それの数倍の抵抗勢力があったはずです。しかし壁にぶつかってもブレずに折れずに熱意をもって粘り強く戦うという岡さんの人間力がなければ決して成功しなかったと思うのです。たとえ岡さんにMBAの知識やスキルがなくても違った形で糸島は成功した可能性がありますが、MBAの知識やスキルがあっても岡さんに人間力がなければ決して成功しなかったと思います。多分マイケル・ポーターでもフィリップ・コトラーでも糸島では成功しなかったと思うのです。
本書は、MBAの知識やスキルの生きた教材として読む方法の他、岡さんと同じ若手公務員のみならず若手サラリーマンへのエール、私のような管理職の人間にとっては部下のモチベーションをいかに生かすか、あたかも『下町ロケット』を読んでいるかのようなエンターテインメントとしてのサクセスストーリー、糸島にゆかりのある方にはなるほどこういうことだったとかという気付き等、沢山の方が色々な目的で読めるものとなっています。
去年の夏、久しぶりに糸島を訪れた時に新駅ができているのを見てびっくりしました。あの地域にも今から人が沢山集まってきそうです。まだまだ糸島は発展していくのだろうと思います。献本ありがとうございました。
しかしこの町のポテンシャルは相当のものだろうなという印象も同時に持ったのです。車で30分も走れば西日本屈指の都会である天神・博多があり、九大の伊都キャンパスには各学部が続々と移転し、半島の美しい風景と魅力的な食、インバウンドの拠点としてビジネスホテルに溢れかえる中国人・韓国人たち。まあしかし息子の大学進学がなければ知らなかった町であり認知度はかなり低いままに時が過ぎていくのだろうと思ったものです。
ところがそれから妙に糸島という言葉を耳にすることが多くなってきたのです。ネットや雑誌のみならず女性の友人からも糸島の魅力を聞かされたり。凄く不思議に思っていたのですがこういう訳だったのですね。この本の著者である糸島市の職員の岡さんを中心とする糸島ブランド戦略が実を結んでいたということです。
本書は公務員でありながらMBAを取得している岡さんがMBAで学んだ手法を駆使しながら単に観光や物産販売を振興するといったレベルではなく、糸島市に移住したい、起業したいと思われ人口増加を目論むといった壮大な夢とその実現、岡さん自身の紆余曲折の半生を盛り込んだ熱量の高い内容となっています。
具体的な内容としては糸島市職員のみならず女子高生を巻き込んでの「糸島マーケティングモデル」による「糸島産ふともずく」の全国への展開、そして第2弾として天然真鯛漁獲量日本一を活かしての「だしスープっ鯛」、第3弾として糸島産メンマを使った油菓子「博多BARIMEN(バリメン)」と矢継ぎ早に糸島ブランドを構成する案を繰り出していきます。
また、産直施設やカキ小屋などの地産地消に拘らず農作物や水産物の巨大消費地の福岡市に向けて糸島産食材を売り込むために、シェフと生産者を直接結び付けることで付加価値を高めていくなど、データを客観的に分析することにより的確な戦略のもと糸島産を単なるモノに留まらないブランドに育て上げることに成功しています。
そして、利害関係の調整がある意味最も難しいと考えられる産学官連携についても折れない心でやり遂げています。本書の中にはMBAで学んだ手法やデータをふんだんに使い説得力のある戦略を立てていますが、私は岡さんの成功におけるその部分の貢献は幹ではなく枝葉だろうと思っています。結局のところ戦略が成功する最大のカギは岡さんの人間力だろうと思います。
何かやろうとするときには必ず抵抗勢力が出てきます。これには二つあって一つは組織内部のもの、もう一つは外部の利害関係者です。どちらも厄介ですが、役所や保守的で昭和から続く大企業では特に内部的に難しい。事実上身分保障が堅固で人事制度が下方硬直的な組織、つまり成果を上げられないからという理由だけで降格となることがほとんどない組織においては、何もしないことが最も合理的な行動と考える人が出てきます。降格となる場合には大きな失敗という客観的な状況が伴いますので何もしなければ失敗はなく給料という既得権益が守られるという考えです。
岡さんは沢山の先輩・上司に助けられたと本書で語っていますが、多分それの数倍の抵抗勢力があったはずです。しかし壁にぶつかってもブレずに折れずに熱意をもって粘り強く戦うという岡さんの人間力がなければ決して成功しなかったと思うのです。たとえ岡さんにMBAの知識やスキルがなくても違った形で糸島は成功した可能性がありますが、MBAの知識やスキルがあっても岡さんに人間力がなければ決して成功しなかったと思います。多分マイケル・ポーターでもフィリップ・コトラーでも糸島では成功しなかったと思うのです。
本書は、MBAの知識やスキルの生きた教材として読む方法の他、岡さんと同じ若手公務員のみならず若手サラリーマンへのエール、私のような管理職の人間にとっては部下のモチベーションをいかに生かすか、あたかも『下町ロケット』を読んでいるかのようなエンターテインメントとしてのサクセスストーリー、糸島にゆかりのある方にはなるほどこういうことだったとかという気付き等、沢山の方が色々な目的で読めるものとなっています。
去年の夏、久しぶりに糸島を訪れた時に新駅ができているのを見てびっくりしました。あの地域にも今から人が沢山集まってきそうです。まだまだ糸島は発展していくのだろうと思います。献本ありがとうございました。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:実務教育出版
- ページ数:240
- ISBN:9784788911901
- 発売日:2020年04月20日
- 価格:1650円
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