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たけぞう
レビュアー:
絶対嗅覚を持つことは不幸なことなのか。傑作です。
絶対音感があるように、絶対嗅覚があっても不思議ではないです。
常人と違う能力を持つために、傷つけられ、こころを閉ざしてきた人がいます。
もし、出会いを通じて再生のきっかけがあれば人は救われるのか、そんな物語です。

千早茜さんは衝撃のデビュー作でファンがついている作家さんです。
わたしはデビュー作を未読ですが、皆さんの書評に惹かれて
ほかの作品をぼちぼち読んでいます。
数えたら五冊目なので、結構取り込まれているみたいです。

それにしてもいい作品でした。
なぜ直木賞候補にならなかったのか、不思議でしょうがないです。
面白かったですから。とても。

一香。いちかと読みます。
短大卒業後、いくつか仕事を変え、最後に書店員を辞めてからアパートに引きこもり、
数か月がたちました。貯金を切り崩し、ぎりぎりで生きています。
幽霊みたいな毎日です。
昼下がりのスーパーで、絶望にまみれたままカップラーメンと菓子パンで
買いもの籠を一杯にして、わずかばかりのお釣りを受け取ります。

スーパーの壁のコルクボードに目が留まります。
アルバイト急募と書かれた一枚のチラシ。
家事手伝い兼事務、接客。経験不問。応相談。

社名はおろか、働く場所や時給すら書いてありません。
一香は、ふらふらとチラシを手に取り、
アパートにつくとなぜだか連絡をしてしまいました。

面接に向かうと、林の中にぽつんと洋館がありました。
がさつで煙草くさい男と最初に会いますが、
すぐに雰囲気の変わった男が現れます。
一香は、今日の出がけに大家さんから庭のバラを手渡され、
鞄の中にしまっていました。もちろん、外からは見えません。
それなのに男は、いきなり鞄の中にバラがあるねと話しかけてきたのです。

男は朔と名乗りました。
話をするうちに一香は違和感を覚えます。
どうやら朔は特別な嗅覚を持っているのです。
しかも、たんに匂いをかぎ分けるだけでなく、
体臭から体調が分かるし、人の気持ちも読み取るし、
なによりも嘘をつくときの香りが分かってしまうのでした。

なぜか朔に気に入られた一香は、アルバイト家政婦で働き始めます。
誰にも言えず、意識すらしていなかった深層心理と記憶が、
二人の出会いを通して徐々によみがえってきます

こころの出会い、覚醒、再生。
素晴らしい読書時間となりました。

【こんな人にお薦め】
自分はこれでいいのかなと思うことがある人に。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1466 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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