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はなとゆめ+猫の本棚
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遠く過ぎ去った甘酸っぱい青春の思い出。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

 私の学生時代には自動コピー機、プリンターなど便利な機械は無かった。
授業は、まじめに出席していなかったので、試験が近くなると、まじめに出席した学生から、ノートを借りて、そこから講義内容を知り、それを読み込んだり、要点をまとめて、試験に臨んだ。

 しかし、まじめな学生の割合が少なく、不真面目なたくさんの学生の間で、講義ノートの取り合いになった。そんなことをしていたら試験までに、ノートが回ってこない可能性がでてしまう。そこで、変ったアルバイトが登場する。

 当時、貧乏学生の印刷は、ガリバン印刷しかなかった。講義ノートをガリバンに書き、それをインクをしみこませたローラーでわら半紙にコピーしてゆくのである。このコピーしたわら半紙を求める不真面目学生に売るのである。

 主人公の寺脇は、大学4年生のとき、追い出しコンパの案内を先輩も含めて、学生に出すことになる。自分は字もきたないし、ガリ版印刷も苦手なため、ガリ版に書く案内は、長内先輩に書いてもらうようお願いした。

 出来上がった案内をローラーでコピーして、案内状を創る。その時、コピー機の横においておいたコーヒーの入っていたコップが倒れ、一枚にコーヒーの染みができる。

 長内先輩は仕上がった案内状を寺脇に手渡し、染みのついた一枚は私へだす案内状だと言って持ち帰る。

 大学を卒業して仕事についてだいぶ経ってから、染みのついたハガキを押し入れから取り出してみる。そこには普通の案内のほかに、奇妙な文字が書かれている。

 AB/CDE/FGHI/JKLMK/NMJKCODOの雪/FIPJQKR/SMTUJQKRK/RGENSK.だから・TNLT これは、何を言っているのだろう。長内先輩の大好きな小説はヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」だった。だからNMJKCODOの雪は「キリマンジャロの雪」だろう。それで、Nはキ、Mはリというふうに、他のアルファベットもキリマンジャロをあてはめてゆく。すると、キリマンジャロもそうだが/で区切られているところは、モカ、ブラジルとかコーヒーの銘柄だとわかり、どのアルファベットがどの日本文字にあたるか全部わかる。

 それで最後は「だからテラワキクン・スキデス」と書いてあったことがわかる。
 遠い青春時代が甘酸っぱく鮮明によみがえる。楽しいミステリーだ。
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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6225 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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