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DBさん
DB
レビュアー:
4人の女の生涯を描いた本
ヴェネツィアがキプロスを手に入れた経緯はこの本を読めと著者の指定だったので読んでみました。

自分の小国を守るために計算高く奔走したマントヴァ侯爵夫人イザベッラ・デステ。
偉大なる父と兄の影で波乱の人生を送ったルクレツィア・ボルジア。
自ら剣をとって戦う女傑でありながら激しい恋をしたカテリーナ・スフォルツァ。
そしてヴェネツィアの政治戦略の駒としての存在だったキプロス王妃カテリーナ・コルネール。
ルネッサンスのイタリアで、大きな政治闘争の影に紛れ込みそうな四人の女性にスポットをあてて紹介しています。

フェラーラ公爵であるエステ家の長女として生まれ、マントヴァを治めるゴンザーガ家に嫁いだイザベッラの生涯の関心事はフェラーラとマントヴァを大国から守ることだった。
経済力に欠けるぶんだけ着こなしでファッションリーダーとなり、芸術家のパトロンとして自身のサロンを有名にする。
美しい女官たちを使い、女の武器も使っての外交戦術は有効だったようです。
彼女が守りたかったのは弟と息子たち、自分の血を引く家族だけだったんだろう。
そういう意味でも女性的だと思った。
彼女のモットー「夢もなく、怖れもなく」が印象に残る。

イザベッラ・デステと対照的なのはフォルリのカテリーナ・スフォルツァだろう。
向かうところ敵なしのチェーザレ・ボルジアに抵抗し、捕虜となってからも影響力が大きすぎて放置することも殺すこともできなかった女性だ。
その女傑ぶりが余すことなく語られています。
だが剣はとれても民衆の心をつかむことができなかったカテリーナはフェレンツェでひっそりと余生を過ごして終わる。

イザベッラとカテリーナに大きな影響を与えたチェーザレ・ボルジアですが、その妹ルクレツィアにとっては人生そのものであったようです。
父親と兄の政治ゲームの駒として結婚と離婚を繰り返す。
塩野氏の描くルクレツィアは、ひたすら流されるだけの女だった。
夫でも恋人でも家族でも、ただ愛してくれる人がそばにいればそれでいい。
そういう意味では充実した人生だったのかもしれない。

最後のカテリーナ・コルネールはヴェネツィア共和国の養女という名目で十四歳の時にキプロス王に嫁いだ女性だ。
壮麗な結婚式の様子が細かく描かれる。
カテリーナ・コルネールが結婚したキプロス王ジャコモ2世に至るまでのキプロスの歴史や、キプロスがヴェネツィアに併合される過程についてはマリピエロの『年代記』に詳しくかかれているそうです。
ジャコモにとってはギリシアを勢力下に置きつつあるトルコが目の前にいる状況で、一番助けになりそうなのがヴェネツィアだったという現実的な結婚だった。
それも結婚してから4年後にようやく花嫁をキプロスに迎え、わずか一年もたたずにジャコモは急死する。
寡婦となったカテリーナはヴェネツィアのキプロス支配のために徹底的に利用され、キプロス併合の後はヴェネツィアでやはり綿密な管理のもとに生涯を過ごす。
キプロスとヴェネツィアの間で木の葉のように揺れ動いた女性だった。

これらのルネサンスを生きた女性たちを取り上げることで、塩野氏の女性観が透けて見えるのが面白い。
そしてこの時代の王家や小国の領主がいろんな形で血縁関係にあったのがよくわかった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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