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Wings to fly
レビュアー:
子ども時代の挫折本に再挑戦してみた。
☆上下巻合わせた感想です。

当時は別の出版社の児童向け名作シリーズの一冊だったと思うが、子どもの頃プレゼントにもらった思い出深い作品である。なぜなら、お話の本をこよなく愛していた私が、途中で放り投げたからだ。あれから数十年、この度、祝 #岩波少年文庫 #創刊70周年読書会 が開催されている機会に、かつての挫折の原因を探るべく再び挑んでみることにした。

この岩波少年文庫版の出版年は2015年だ。「読み継がれるべき名作」として選ばれたということなのだろう。こんなストーリーである。

19世紀のロンドン、御者の息子ダイヤモンド少年は、ボロボロの馬小屋の二階に両親と暮らしている。強風の吹き荒れる夜、馬小屋の薄い壁の節穴から誰かが話しかけてきた。それは北風で、豊かな黒髪と輝く瞳の力強い美しさを持つ女性だった。その夜から時折、ダイヤモンドは北風の腕に抱かれて様々な場所へ旅をし、最後に北風のうしろの国へと向かう。やがて目が覚めた時、お母さんは息子が重い病から回復したと泣いていた。
後半は、北風のうしろの国から帰ってきたダイヤモンド少年が、周囲に及ぼす様々な出来事が語られてゆく。

ダイヤモンドは無邪気で純真な少年である。人を思いやり人を信じる心が、波紋のように影響を広げてゆく。その良い子っぷりが完璧すぎる。ストーリーは淡々と進行し、挿入される歌(詩)の長さに飛ばし読みしたくなる。そして、物語には次第に死の予感が漂い始める。子どもだった私は、その不吉な感覚が怖かったのかもしれない。途中でやめてしまった要因は、このようなところだと思う。

しかし、描写力は卓抜している。少年が北風の腕の中から眺める地上の風景は激流のように流れ、嵐の大海原には雷の轟音が響き渡る。「スペクタクル」という感じだ。
強く美しく冷え冷えとした北風は死の象徴であり、ゆえに一度あちらの世界を見たダイヤモンド少年は、浮世離れして見えるのだろう。これは、神に愛でられし者の祝福の物語を、ファンタジックに描いた作品なのだと思った。

ウイキペディアによれば、作者マクドナルドは聖職者であり、C・S・ルイスは彼を「師匠」と呼んで呼んでいたそうだ。この作品がナルニア国の誕生に力を貸したのかもしれないと思うと、何やら感慨深い。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. ぴょんはま2020-03-20 23:08

    子どもには怖い話でしたね。
    昔、講談社?の児童文学全集のようなもので読んだと思います。一冊に二つか三つのお話が入っていて、違う話の方を目当てに買ってもらったか与えられたかで、かなり長い間そちらの話だけ読んで、こちらは敬遠していました。だいぶ成長してから読んだと思いますが、それでもうかうか読むと黄泉の国に連れていかれそうで覚悟の要る取っつきにくい話だったような記憶です。
    大人になって「リリス」とか読んで、マクドナルド読んでいたんだと気づきました。今となっては、良く読んだはずのもうひとつの話が何だったか思い出せません。

  2. 脳裏雪2020-03-21 09:40

    いわゆる小学高~中学 向けの本には、何やらクスグられ魅せられるものがあって、巧く云えませんが貴重です、
    いいですね、読んでみたいです、

  3. Wings to fly2020-03-21 19:23

    ぴょんはまさん
    私のと、たぶん同じ本だと思います(^^) そうなんですよ。今考えてみたら、どこへ連れて行かれるのか不安で怖かったんだなぁと思うのです。同じ本に他の話が入っていたかどうか、もはや記憶に無いのですが、このお話への拒否反応だけは強く印象に残っています。

  4. Wings to fly2020-03-21 15:56

    脳裏雪さん
    読んでみたいとおっしゃっていただき、すごく嬉しいです。その節は感想をお聞かせくださいね!
    この作品、子どものために書かれたお話ではありますが、どういうことかちゃんと分かるのは大人になってからじゃないかと思っています。ちゃんとわかったかどうか自信がないけれど…(汗)

  5. すずはら なずな2020-03-21 18:50

    「魔法のベッド」と併催の本でしょうか?ベージュでお城か王冠のマークがついていた。それ、持っていました。
    子供心には少し絵も怖くて、でもずっと心のどこかに残って、気になる本でした。
    懐かしいです。

  6. Wings to fly2020-03-21 19:40

    すずはら なずなさん
    そうかも(≧∇≦)
    なんか王家のマークっぽいものがついていたような気がします。
    そして、貴女のコメントにすごく納得してしまったのでした。
    怖くても、ずっと心のどこかに残っていなかったら、今読み返してみようとは思わなかったんじゃないかと…すごいインパクトですよね!
    そして、挫折に伴い「魔法のベッド」というお話を(たぶん)読んでいなかったことが、非常に残念です。

  7. ぴょんはま2020-04-16 23:26

    気になって検索してしまいました。
    世界の名作図書館9 北風のうしろの国へ まほうのベッド 講談社
    「まほうのベッド」の作者はメアリー・ノートンじゃないですか。びっくり。
    そちらは楽しい話だった印象だけれど、私ずっと自分はメアリー・ノートンは読まずに来ちゃったと思っていました。

  8. Wings to fly2020-04-17 15:36

    そんな前からメアリー・ノートンが紹介されていたとは。今にして思えばサプライズな組み合わせですね。

  9. No Image

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