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DBさん
DB
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カジノと百万ドルの夜景の本
デリーのドミトリーでのシーンから話ははじまります。
日本を出て半年、デリーの安宿で連泊し、1日1ドル程度で過ごす毎日だ。
外に出るのもただの時間潰しのようなもので、町を歩き食事をして夜になればドミトリーで眠る。
だが筆者と同じような生活をしていたドミトリーの隣のベッドの男の虚ろな眼を見て、ようやく行動しなければという気力がわいたようだ。

そもそも旅のはじまりはデリーからロンドンまでバスで行こう、という目標を実現すべく日本を飛び出したことだった。
なぜバスなのか。
きっと電車だとすぐに着いちゃうし、自転車だと辛すぎるしということでバスになったんじゃないかと思う。
本人が言うように「真剣に酔狂なことをする」というだけのことかもしれない。

だがなぜデリーからロンドンの旅なのに香港とマカオなのかというと、東京からデリーの安い航空券を買ったらストップオーバーができると告げられたからだった。
とりあえず香港に寄ってみるかという予定のない旅は、香港とマカオだけで全六巻中の一冊を占めるほどの長期滞在になったのだった。

予定は未定な旅を続けていく中で、単純な計画実行以外の何かを求めている。
そんな雰囲気は確かにあるけれど漂泊感はあまりない。
孤独を感じている雰囲気がないからというのもあるし、非日常を楽しむ余裕があるからとも言えるだろう。
それは後書で筆者自身が述べているように、旅から時間をおいて振り返った文章だからかもしれない。
冒頭にデリーの宿で一瞬見せたような無気力に浸りきるでもなく旅を続けていく。

最初の逗留地の香港では、かなり怪しい雰囲気の宿に長逗留する。
デリーに行くまでのちょっとの寄り道のはずの香港で、祭りのような雰囲気の街に魅せられたかのようだ。
フェリーの描写や屋台が連なっているシーンでは旅行で訪れた香港を思い出させた。

そして足を伸ばしたマカオではカジノにはまった体験談を書き綴っています。
旅の資金の残高を考えながら、敗けを取り返さないといけないという完全なるギャンブラーの精神で賭場に通いつめます。
しかし仕事もなにも放り出してバックパッカーとして旅に出てしまう筆者ですが、意外と真面目な部分もあるんだなと思った。
やりたいとは思わないが、カジノの雰囲気やギャンブラーの心境が詳細に書かれていて面白い。

ちなみにタイトルの深夜特急ですが、脱獄のスラングだそうで実際に列車が出てくるわけではないです。
日常からの脱獄という意味深なタイトルだったんですね。
それにしてもデリーというスタート地点にたどり着くのはいつなんだろう。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 薄荷2020-07-14 20:16

    >実際に列車が出てくるわけではない・・・え?!Σ( ̄□ ̄;)そうなんですか!?私ずっと電車旅の話だと思ってました・・・。

  2. DB2020-07-14 20:27

    そうなんです。バスより電車が早いし確実と言われながら、頑なにバスの旅をする話なんです(^-^;

  3. No Image

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