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献本書評
休蔵さん
休蔵
レビュアー:
『ドミノ』から早20年近くなる。よもや『ドミノ』を冠した新作小説が世に問われるとは思ってもみなかった。恩田陸にどっぷり浸かり込むきっかけになった『ドミノ』。あの疾走感が再び!
恩田陸をはじめて知ったのは『六番目の小夜子』だった。
 ただし、NHKのドラマでのこと。
 小説では『ドミノ』。
 圧倒的なスピード感と絡みついた人間関係の妙に一気読みしたことを今でも覚えている。
 そのタイトルを冠した作品が再び生み出された。
 舞台は上海だ。

 本書は序章-5からスタートする。
 カウントダウンする序章で、大雑把に登場人物の紹介。
 最初は日中米3ヶ国合作のホラーアクション映画『霊幻城の死闘・キョンシーVSゾンビ』の製作。
 ただ、撮影シーンではなく、このドミノ倒しの要因とも言えるが、何のことやら重要性のまったく分からないエピソードだからはじまる。
 次いで上海動物公園のパンダが登場。
 しかも、厳厳と名付けられたパンダの思考が展開される。
 もちろん、何のことやらさっぱりの状態である。
 次にアート業界人が登場。
 上海の四つ星クラスのホテル、青龍飯店を会場とした現代アートフェアだ。
 ちなみに、このホテルは今回のドミノ倒しで重要な舞台となる。
 改造バイクが並ぶ「寿司喰寧」が続く。
 日本から冷凍握り寿司を輸入して、改造バイクで宅配する業種だ。
 まだなぜこのエピソード?といった状態である。
 そして、序章の最後は上海浦東国際空港の到着ロビー。
 3人の日本人が登場する。
 何の繋がりも感じられない序章のエピソードは、ささやかな関りから一本のドミノ倒しへと大転換していく。
 もはや誰の手にも止めることはできない疾走感で。

 序章の後、ドーンとタイトルが見開きで登場。
 まるで映画のような出だしは、複数の登場人物たちが複雑に絡み合うストーリー展開を予測させて期待感を盛り上げる。
 そして、いよいよ本編だ。
 序章には様々な場面に、いろいろな人物が登場するが、もちろんそれ以外の要素が付け加えられていく。
 本作で最も重要な要素となるのは、“蝙蝠”。
 香港から上海へと密輸された“蝙蝠”が、ドミノを倒す指のような役割を果たす。
 “蝙蝠”に推された個性豊かな駒たちは、倒れてくる前の駒を避けることもできず、ただただ疾走感を増しながら倒れ進んでいくことに。
 “蝙蝠”は登場人物たちのの歯車をいかに狂わせていくのか?
 そして誰がハッピーエンドとなり、誰がバッドで終わるのか?
 そもそも“蝙蝠”とはいったい何なのか?

 恩田陸の『ドミノ』は特定の主人公を設けない点に特徴がある。
 もちろん『ドミノin上海』も同じ構成。
 登場人物25人と3匹の誰に感情移入するかは人それぞれで、そのことが物語に深みを与えている気がする。
 複数の読み方を可能にしているのだ。
 
そして、本作で恩田作品に初めて接した人もドミノの中に巻き込まれるに違いない。
 かく言う私は『ドミノ』から恩田作品に魅了されてしまった。
 結果、次から次に発表される作品を追いかけるように読破することに。
 『ドミノin上海』にも同じ効用が見込まれるので、初心者の方はご注意を。
  
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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