たけぞうさん
レビュアー:
▼
サラリーマン必読本。最近の絲山さん、絶好調!
前作もすごく気に入ったのですが、この作品も大満足でした。
エッセーで読む限りですが、最近の絲山さんはほぼ回復できているようで、
作品にも現れているのでしょう。
御社のチャラ男は、代表作の一つといつか言われそうだなと
想定されるくらい素晴らしい出来栄えでした。
ジョルジュ食品という、ニッチ商品を取り扱う小さな会社が舞台です。
働く社員や、取引先、関係者などのいろいろな視点で
会社のチャラ男を描いていくお話です。
かなりの数の章があります。チャラ男本人の章もあります。
そんな多くの視点で書き分けてあるのですが、
一つ一つの個性がしっかりしているので、価値観の違いを存分に楽しめるのです。
それにしても、よくこれだけきちんと書き分けられるものだというのが
率直な感想です。感服しましたよ。
これほどの作品は、なかなかお目にかかれないレベルだと思います。
三芳道造、四十四才。ジョルジュ食品営業統括部長。
肩書は立派ですが、そもそも組織図なんて誰も見たことのない会社です。
東京のクラウドソーシングの会社にいて、その後アメリカに渡り、
社長の知り合いか何かのコネで入社してきた人です。
これぞヘッドハンティング、なんて三十二才の岡野君は思っています。
三芳部長は、軽い雰囲気でちょっと変わっているけれど、
お客様の誕生日や創立何年とかをおさえて気遣いのできる人だし、
見栄っ張りでお洒落が似合うルックスだし、
話題も豊富という都会的なできる男という ────── 岡野君目線、なるほどです。
これがですね、見かたを変えるといろいろ違っていて面白いのです。
怖いですね。思いこみ? ちゃんと見ていない?
言うのは勝手ですが、他人の目から見た評価なんてどこまでいっても
ずれがありますから。
そんな部長のことを、山田さんがチャラ男と名付けたのです。
山田さんは転職で渡り歩いてきた人です。
ああいう人はどこにでもいる、クローンみたいにそっくりなのがいると断言し、
チャラ男というネーミングセンスに岡野君の頭は取りつかれてしまいます。
ああ楽しい、分かる分かると読んでいるうちに、
チャラ男本人の章に差しかかって衝撃を受けます。
素晴らしい価値観で、仕事との距離感の絶妙さを持っており、
これぞ出世する人の思考と舌を巻きました。
社長の章もすごかったですね。キレイごとの世界に裏に隠された
上に立つ者の心理を見事に描いています。
ビジネス書は数ありますが、これくらい分かりやすく会社員の
職位別の発想を整理してある本は、まだ読んだことがないです。
しかもそれは登場人物の設定に過ぎず、
設定を活かしてにじみ出てくる人間性と結びつけているのも、
神がかり的な作りこみに感じます。
もちろんビジネス小説みたいなものとはまったく違いますよ。
これは単なる小説です。
事実は小説より奇なりという言葉があります。
それとは逆の見かたになりますが、
人のこころを知ることは至難の業で、それを小説の形にして
理解できる本作は、ある意味で事実を超えた理解を進めてくれる
感覚がありましたね。
いずれ代表作と言われるでしょう。
もしくはそうあって欲しいと強く願う一冊です。
エッセーで読む限りですが、最近の絲山さんはほぼ回復できているようで、
作品にも現れているのでしょう。
御社のチャラ男は、代表作の一つといつか言われそうだなと
想定されるくらい素晴らしい出来栄えでした。
ジョルジュ食品という、ニッチ商品を取り扱う小さな会社が舞台です。
働く社員や、取引先、関係者などのいろいろな視点で
会社のチャラ男を描いていくお話です。
かなりの数の章があります。チャラ男本人の章もあります。
そんな多くの視点で書き分けてあるのですが、
一つ一つの個性がしっかりしているので、価値観の違いを存分に楽しめるのです。
それにしても、よくこれだけきちんと書き分けられるものだというのが
率直な感想です。感服しましたよ。
これほどの作品は、なかなかお目にかかれないレベルだと思います。
三芳道造、四十四才。ジョルジュ食品営業統括部長。
肩書は立派ですが、そもそも組織図なんて誰も見たことのない会社です。
東京のクラウドソーシングの会社にいて、その後アメリカに渡り、
社長の知り合いか何かのコネで入社してきた人です。
これぞヘッドハンティング、なんて三十二才の岡野君は思っています。
三芳部長は、軽い雰囲気でちょっと変わっているけれど、
お客様の誕生日や創立何年とかをおさえて気遣いのできる人だし、
見栄っ張りでお洒落が似合うルックスだし、
話題も豊富という都会的なできる男という ────── 岡野君目線、なるほどです。
これがですね、見かたを変えるといろいろ違っていて面白いのです。
怖いですね。思いこみ? ちゃんと見ていない?
言うのは勝手ですが、他人の目から見た評価なんてどこまでいっても
ずれがありますから。
そんな部長のことを、山田さんがチャラ男と名付けたのです。
山田さんは転職で渡り歩いてきた人です。
ああいう人はどこにでもいる、クローンみたいにそっくりなのがいると断言し、
チャラ男というネーミングセンスに岡野君の頭は取りつかれてしまいます。
ああ楽しい、分かる分かると読んでいるうちに、
チャラ男本人の章に差しかかって衝撃を受けます。
素晴らしい価値観で、仕事との距離感の絶妙さを持っており、
これぞ出世する人の思考と舌を巻きました。
社長の章もすごかったですね。キレイごとの世界に裏に隠された
上に立つ者の心理を見事に描いています。
ビジネス書は数ありますが、これくらい分かりやすく会社員の
職位別の発想を整理してある本は、まだ読んだことがないです。
しかもそれは登場人物の設定に過ぎず、
設定を活かしてにじみ出てくる人間性と結びつけているのも、
神がかり的な作りこみに感じます。
もちろんビジネス小説みたいなものとはまったく違いますよ。
これは単なる小説です。
事実は小説より奇なりという言葉があります。
それとは逆の見かたになりますが、
人のこころを知ることは至難の業で、それを小説の形にして
理解できる本作は、ある意味で事実を超えた理解を進めてくれる
感覚がありましたね。
いずれ代表作と言われるでしょう。
もしくはそうあって欲しいと強く願う一冊です。
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:講談社
- ページ数:322
- ISBN:9784065178096
- 発売日:2020年01月23日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。