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ぷるーと
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子馬を手に入れた少年の気持ちを鮮やかに描いた、スタインベックの自伝的短編集。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

カリフォルニア州サリーナスを舞台に、牧場に住むジョーディ少年を主人公とした4つの短編を収めた短編集。

『贈り物』
父親が買ってくれた子馬を大切に世話していたのに、突然降りだした雨の中に長時間放置されたため、その子馬は死んでしまった。
子馬をもらったジョーディの喜びや期待。少年の心理が細やかに描かれている。また、作者の経験に基づいた子馬の様子や調教の様子なども詳細に描かれている。

『大連峰』
ジョーディは、牧場の東側の山脈ギヤビランには親しみをもっており、もらった子馬にもこの山の名前をつけた。一方、西の山にはなんともいえない恐れを抱いており、あの山の中には何があるのだろうと気になって仕方がない。
ある日、見知らぬ老人がやってきて、「ここは自分の牧場だった」と居座ろうとする。年老いて行き場を無くした老人が老いた馬に乗って西の山に消えていく姿は、なんとも物悲しく、神秘的でもある。

『約束』
子馬を死なせてしまったことをかわいそうに思った父親は、ジョーディのために、牝馬に種つけをして生まれた子馬をジョーディにやると約束する。だが、出産のとき逆子だとわかり、母子ともに危険な状態に。雇用人のビリーは、ジョーディとの約束を守るために母馬を殺してしまう。

本来なら母馬を助けるため、逆子の子馬は殺されてしまうものだということは、ビリーも語っている。また、雇われの身のビリーが、主人の許可もなく馬を殺してしまうなど、ありえない。だが、スタインベックが母体より子馬を助けたのは、子馬にジョーディの未来を重ね合わせたからだろうか。スタインベックには、母馬を守るために子馬が殺されるという辛い経験があったのかもしれない。

『開拓者』
ジョーディの祖父がやってきた。ジョーディは昔の話をしてくれる祖父が好きだが、父親は祖父の毎度同じ話にうんざりしている。
ジョーディは、自分もかつての祖父のようにどこまでも進んでいくつもりだと言うが、祖父はもうどこにも進んでいける場所などないと言う。

もうどこにも昔のような風景は残ってはいないと知っているからこその郷愁。だが、今を必死で生きている者は、郷愁に浸ってなどいられない。
引退したも同然の老人と、今を必死で生きている者と、まだ何ものでもない少年、三者三様の心の在り方。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2930 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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