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日本初の女性雑誌『青鞜』の軌跡をふりかえる力作評伝!
明治44年、5人の女性メンバーが中心となって日本初の女性雑誌が誕生した。⦅表紙の担当は『智恵子抄』で有名な長沼智恵(高村智恵子)。》巻頭を飾ったのは「創刊の辞」で、その冒頭はこうはじまる。
本書は、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』の創刊メンバーのひとりだった著者が、「雑誌編集」という切り口をもとに、青鞜の誕生秘話から休刊に至るまでの軌跡をふりかえる力作評伝。内容は作品評、広告やデザインなどにもおよび、著者の経験と綿密な調査を活かしたユニークな本に仕上がっている。
青鞜のメンバーというと、平塚らいてうや伊藤野枝らの名が思い浮かぶだろう。だが、「雑誌編集」という角度から見ると、周辺人物たちの重要性がより浮き彫りにされるところが興味深い。それは雑誌制作がクリエイティブな作業というより、むしろ面倒で泥臭い作業であることを物語っている。
著者によると、雑誌制作の作業の多くは、編集・交渉・配送・販売・集金などの「編集実務」「事務処理」にあるという。この作業をおろそかにすると、雑誌は廃刊に追い込まれるとまで言い切っている。これを「三号雑誌」と呼ぶらしい。ところが、らいてうや野枝の関心は、自らの思想を伝達する方に偏っており、地味な実務作業には理解が足りなかったのではないかというのだ。年齢や事情を考慮するにしても、その傾向は野枝に顕著にあらわれる。
(青鞜の記事は誤植が多いことで有名だったという。)
創刊時のメンバーで、事務全般を請け負った保持研(やすもちよし)や、創刊費用を捻出した、らいてうの母・光沢(つや)の存在を、著者が同情なり評価なりするのは「雑誌編集」という切り口から見えてくる基準ならではのものだろう。だが、この未熟さこそ、雑誌制作に奮闘する彼女たちの姿を伝えるようで微笑ましくもある。それは若さにまかせて手探りで進めていたからこそ感じる魅力なのかもしれない。
元始、女性は太陽だった。真正な人であった。と。女性の価値を高らかに宣言し、のちに女性解放史の1ページに刻まれた雑誌こそ、平塚らいてうが主宰した『青鞜』であった。
本書は、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』の創刊メンバーのひとりだった著者が、「雑誌編集」という切り口をもとに、青鞜の誕生秘話から休刊に至るまでの軌跡をふりかえる力作評伝。内容は作品評、広告やデザインなどにもおよび、著者の経験と綿密な調査を活かしたユニークな本に仕上がっている。
青鞜のメンバーというと、平塚らいてうや伊藤野枝らの名が思い浮かぶだろう。だが、「雑誌編集」という角度から見ると、周辺人物たちの重要性がより浮き彫りにされるところが興味深い。それは雑誌制作がクリエイティブな作業というより、むしろ面倒で泥臭い作業であることを物語っている。
著者によると、雑誌制作の作業の多くは、編集・交渉・配送・販売・集金などの「編集実務」「事務処理」にあるという。この作業をおろそかにすると、雑誌は廃刊に追い込まれるとまで言い切っている。これを「三号雑誌」と呼ぶらしい。ところが、らいてうや野枝の関心は、自らの思想を伝達する方に偏っており、地味な実務作業には理解が足りなかったのではないかというのだ。年齢や事情を考慮するにしても、その傾向は野枝に顕著にあらわれる。
(青鞜の記事は誤植が多いことで有名だったという。)
創刊時のメンバーで、事務全般を請け負った保持研(やすもちよし)や、創刊費用を捻出した、らいてうの母・光沢(つや)の存在を、著者が同情なり評価なりするのは「雑誌編集」という切り口から見えてくる基準ならではのものだろう。だが、この未熟さこそ、雑誌制作に奮闘する彼女たちの姿を伝えるようで微笑ましくもある。それは若さにまかせて手探りで進めていたからこそ感じる魅力なのかもしれない。
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この書評へのコメント
- calmelavie2020-02-10 23:01
こんにちは。
いつのころからか、僕は、「青鞜」というと、まず智恵子が思い浮ぶようになりました。今は亡き現代教養文庫の中に『紙絵と詩 智恵子抄』という一冊があります。御存知かもしれませんが、そのなかに、平塚らいてうが智恵子を語る短い文章が載っています。何十年前だか忘れましたが、読んだ当時、なんだかイヤにつっけんどんな語り口なので、僕はあまりいい気分ではありませんでしたねw。
性格が違いすぎるのかもしれません。
ところで、津村節子の『智恵子 飛ぶ』お読みになりましたか?
明子(らいてう)とテニスをやっている智恵子が可愛いです。
関係ない話ですみませんでしたm(_ _)mクリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - mono sashi2020-02-11 15:40
*calmelavieさん
おひさしぶりです。コメントありがとうございます。
>なんだかイヤにつっけんどんな語り口
わかる気がします。本書にはらいてうの自伝から多くの引用がなされているのですが、その人物評を読むと、どこか仲間を突き放しているようにも受けとれました。それにカチンときたのか、著者のらいてう評もかなりキツイものになっています。
らいてうと智恵子は、同じ大学の家政科でテニス仲間だったようですが、学生時代は一言も口をきいたことがない不思議な仲だったみたいですね。
あと、当時の女性たちにとって、与謝野晶子の存在感ってやはり特別だったようで、そのラスボス感が凄かったです。津村節子の『智恵子 飛ぶ』ですか。探してみます!クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:集英社
- ページ数:368
- ISBN:9784087455595
- 発売日:2017年03月17日
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