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星落秋風五丈原
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恋愛の機微を知り尽くした作家コレットが描く 瑞々しいティーンのアオハル
 16歳半のフィリップと15歳半のヴァンカが、両親に連れられてブルターニュでバカンスを過ごす。いつも通りのエビ獲り場面から物語は始まるが、ヴァンカが三年前から着ているスカートは背が伸びて膝丈が見えるくらいだ。一年前までは気づかなかったチラ見えが、フィリップには気になっている。もうこの場面で、二人がぎこちない事がわかる。

 前兆は前年にあったらしい。
去年はとうとう激しい言い争いをしたし、人のいないところでは殴りあいまでした。最近は、ふたりでいてもすぐに沈黙が広がる。重苦しい沈黙だ。それでも、無理に話そうとするぐらいなら不機嫌に黙りこんでいるほうがましだと、お互いに思っている。

 今年は一歳上のフィリップが「どうせ言ってもわかんないだろ?」の大人ぶりっこ必殺決め台詞を連発し、ヴァンカが悔しい思いばかりしている。

 なまじ幼馴染であるだけに、両親間では「いずれ結婚させようか」という話も出てきているが、当人同士はぴんとこない。このまま成り行き任せと思いきや、フィリップの前にオトナの女性マダム・ダルレイが現れる。彼女との出会いにより
いつも自由に手が届く存在であってほしい。ちょっと顔が赤らんでしまうような大切な宝物…押し花とかビー玉とか、貝殻とか植物の種とか、絵とか小さな銀の懐中時計とか…と同じように。

女の子はビー玉かよ!なフィリップのヴァンカに向けた独占欲・所有欲も一皮むけたものに成長し、
愛してるわ、フィル。わたしのこと好きにしていいから

(いやいやそんな事簡単に言っちゃだめだよ)気持ちと言葉はフィルより遥かに先を言っているヴァンカもまた、フィリップの秘密に気づくことで自らの思いと向き合っていく。

 両者のお互いに関する恋愛感情の揺れ以外にも、大人の階段のぼりかけの二人が、大人達が自分をどう見てるか知り、その期待通りに振る舞う一方で、彼等の幼い考えにある種の諦めを抱いたり、フィリップの父が「ヴァンカと結婚することは彼女と結婚しないと同じくらい不確かなことなんだよ」とさりげない散歩の時にアドバイスするなど、子供が大人と対等である場面も印象的だった。

シドニー=ガブリエル・コレット著作
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2325 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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