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紅い芥子粒
レビュアー:
南太平洋に浮かぶ諸島、ニューカレドニア。そこのカラスは、道具を使うことで知られています。ただ使うだけではありません。目的に応じて、加工することもできるのです。
まあ、とにかく表紙のカラスの写真を、ようく見てください。
かしこそうな茶色い目は、木の穴の中のカミキリムシの幼虫をねらっています。
カラスは、丸々太った幼虫を、細い木の棒を使って、引きずり出そうとしているのです。
長い棒をくちばしでくわえ、片端を幼虫に突き刺すと、足の爪で棒を抑えます。そこを支点にして、てこの原理で、ぐいっと幼虫を穴の外に出すのです。
ね、すごいでしょう。
このカラスの名は、小羽ちゃんといいます。雌雄は不明ですが、まだ若いひな鳥です。
親鳥のすることをじいっと見ていて、この方法を学びました。

ムニン君は、細い棒きれを使って、箱の中から長い棒きれを取り出し、その長い棒きれをくちばしにくわえて、箱のさらに奥にある肉片を取り出して食べることできます。
二段階の道具使用ができるのです。

小羽ちゃんやムニン君は、カラス学者のギャビン・ハント博士のチームに飼育されているカラスです。といっても、べつに英才教育を受けているわけではありません。森で捕獲され、数か月の間、博士の実験に協力してあげているだけです。
カラスがどれほど賢いか、いくつかの試験で試されます。
試験は、どれもカラスのくちばしでは届かないところにあるごちそうを、取り出せるかどうかを試すものです。
何種類かの道具を与えられれば、彼らは、試行錯誤の内に、適切な道具を選ぶことができます。
はりがねを与えられれば、先をフック状に加工して、ごちそうをひっかけることもできました。
底の方にちょっぴり水の入った円筒形の容器に、大好きなブタの心臓を入れた箱が浮かんでいれば、小石をくわえて中に落とし、くちばしの届くところまで水位を上げることも思いつきました。

同じ課題を五、六歳の子にやらせてみても、カラスほど課題解決率は高くなかったそうです。

ギャビン博士の研究にたっぷりつきあってあげた後、彼らは、ニューカレドニアの美しい自然の中に帰ってい行きました。
繁殖という、自然から与えられた重大な使命がありますからね。

青い海と、深い緑の森を背景に、いかにも賢そうなカラスたちの写真とイラスト満載の楽しい本でした。

へええと思ったのが、ニューカレドニアのカラスは、カアとかガアではなく、ワアとかワッワッと鳴くということ。
原書でWaah!とかWaak!になっているので、翻訳者の須部宗生さんも違和感があって、動画やNHKの「ダーウィンが来た」のDVDを見て調べてみたそうです。
そうしたら、ほんとうにニューカレドニアのカラスは、ワアワア鳴いていたそうです。

カラスにも日本語とかニューカレドニア語とか、あるのかもしれませんね。




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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:559 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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