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マーブル
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「土曜日の、実験室~」これは眉村作品か?もちろん代表作と言えるのだろうが、これをもって筒井作品の味を決めつけると後悔する。

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

 我々と同世代であれば原田知世主演の映画にときめいた方も多かろう。観る機会に恵まれず比較する術はないのだが、その後もドラマ化、アニメ化など繰り返されている。その魅力はどこにあるのか。

 未見のためすべてに共通するのかは定かではないが、魅力的な若い女優さんを配していることや、アニメを観た際の印象から想像するに、そこに共通しているのは、ごくありふれた日常的な青春のひとこまに、突然現れては儚く消えた「時間」と言う名のどうしようもない一欠片。その切なさと甘酸っぱさが時を越えて繰り返し取り上げられる理由ではないか。

 「時間」とは扱いにくい、手に余るものである。
 足りなく感じたり、持て余したり。
 忘れてしまいたい時や、手放したくない時。
 我々は流れ、流されるだけで、輝かしい青春の日々も戻りはしない。

 「時間」をテーマにしたSFはたくさんあって、私も好みのジャンルだが、逆に好まぬ人もいるだろう。そこには氷細工のような、あるいは追いかけても追いつかぬ虹のごとき魅力があるが、反面手に取れぬもどかしさもある。受け入れられぬ人は受け入れられぬのだろう。

 表題作『時をかける少女』は100頁ほどの短い作品である。この文庫にはその他2編が納められていて、ジュブナイルと言っていい設定とストーリーに、先日読んだ『狙われた学園』の眉村作品と言われても信じてしまいそうだ。
 活発な女の子、そして大人しめの男子。平穏な学生生活を襲う意外な出来事。
 ターゲットとする少年少女たちの姿が思い浮かぶ。


 『悪夢の真相』は自らも原因の解らぬ恐怖の理由を、深層心理から探る物語。
 SFでもなく、ミステリと言うほどでもない、日常からほんの少しだけはみ出した世界。この年代の若者が抱く心の不思議さにもマッチして、精神分析などへの興味を開かせるきっかにもなっているかもしれない。

 『果てしなき多元宇宙』はSFものだが、ストレートなタイトルで行く先が見えてしまうような作品。ちょうど同時に読んでいた量子力学に関する本の中でもパラレルワールドのことを読んだばかりだったのでその偶然にちょっと愉快な思いを抱いた。ああいった物理学の理論を読むと、想像が広がってSF的妄想が沸いてくるなあ、と思っていたのとジャストミートであった。

 書いていて思い出したが、あの頃は土曜日も学校があったんだよね。

 【読了日2020年1月15日】

  ◆角川映画
1976年 犬神家の一族
1977年 人間の証明
1978年 野性の証明
1979年 悪魔が来りて笛を吹く
1979年 白昼の死角
1979年 蘇える金狼
1980年 復活の日
1980年 野獣死すべし
1981年 ねらわれた学園
1981年 悪霊島 上
    悪霊島 下
1981年 セーラー服と機関銃
1982年 汚れた英雄
1983年 幻魔大戦
1983年 時をかける少女
1983年 新・里見八犬伝 上
    新・里見八犬伝 下
1984年 Wの悲劇
1986年 彼のオートバイ、彼女の島
    • 所有する原田知世が表紙の文庫。映画にも出てこない謎の制服。
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マーブル
マーブル さん本が好き!1級(書評数:1070 件)

 文学作品、ミステリ、SF、時代小説とあまりジャンルにこだわらずに読んでいますが、最近のものより古い作品を選びがちです。
 
 2019年以降、小説の比率が下がって、半分ぐらいは学術的な本を読むようになりました。哲学、心理学、文化人類学、民俗学、生物学、科学、数学、歴史等々こちらもジャンルを絞りきれません。おまけに読む速度も落ちる一方です。

 2022年献本以外、評価の星をつけるのをやめることにしました。自身いくつをつけるか迷うことも多く、また評価基準は人それぞれ、良さは書評の内容でご判断いただければと思います。

プロフィール画像は自作の切り絵です。不定期に替えていきます。飽きっぽくてすみません。

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