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Kuraraさん
Kurara
レビュアー:
作品の持つ静謐な雰囲気、異国情緒。つかみどころのない話ではあるけれど、旅をしながら浄化され、再生していくような不思議な感覚がある素敵な物語。
櫻木みわさん。初読みにして、すでにファンになってしまった。まずはプロフィールを記しておこう。

櫻木みわ : 1978年福岡県生まれ。タイ、東ティモール、フランス滞在などを経て、2018年に作品集『うつくしい繭』で単行本デビュー

まだ作家生活は短いようですが、逆にこれがデビュー作だと思うと胸が高鳴ります。海外滞在歴が豊富にあるようですね。本書も東ティモール、ラオス、南インド、南西諸島と、あちこちと舞台を変えながら、その土地土地を思い切り感じられる小説に仕上がっている。現地を知っている者しか書けない描写が秀逸です。

4つの短編集です。

最初はちょっとつかみどころがないだけに、不安な気持ちになるのだけれども、やがて光が見えて来る感じが実に心地よい。こういう雰囲気の小説は大好きなんだけど、如何せん感想を書くのが難しい。書こう書こうと思いながら時間が経ってしまった。ということで今回は一番気に入った表題作の「美しい繭」についてちょっとだけ。

恋に傷つき疲れ果てたひとりの日本人女性。旅を終える空港である女性と偶然出会う。その女性のすすめにより、彼女は予定を変更してある施設を訪れることにした。

そこは携帯の電波も届かないラオスの僻地。施設は知る人ぞ知る富裕層向けの施設で、大きな繭のような「コクーン・ルーム」という部屋がある。ゲストはそこで「トリートメント」を受けることが出来るのです。

彼女はそこでスタッフとしてしばらく働くことに。ある日、ずっと大好きだった作家・シャン・メイがやって来て対面。シャン・メイの許しを得て、代わりにトリートメントを受けることになる。トリートメントを受けた彼女が体験したことは....。

ざっくりなので分かりにくい世界だと思いますが、んー、なんていうのかな。ラストは大きなカタルシス効果とでも言おうか。なんだかわからないけれども、ツーッと涙が流れてしまう。これは感情が揺さぶられて流れた涙でもなんでもなく、ただただ何かが戻ってくるような、懐かしいような不思議な水のような涙だった。

自分の記憶の再生、過去の人々とのつながりなどが蘇り、それらが何もかもを浄化してくれるような....。魂の旅をしてきたような....。

あれこれ書きたいことはたくさんあったのに、やはり上手く伝えられない。けれども、大変素敵な作品に出会えたということは確かです。美しい文体、作品の持つ静謐な雰囲気、異国情緒。そして各国が抱えている問題、歴史。最終話の南西諸島の話に辿り着くまで、本当にいろんな場面を見てきた。

ということで、新たにお気に入りの作家さんが増えました!次作も出ているようですし、楽しみがまたひとつ増えました。まだまだ知名度は低いかなと思いますが、注目される日も近いかも!?ですね。

2022/8/8記
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Kurara
Kurara さん本が好き!1級(書評数:811 件)

ジャンルを問わず、年間200冊を目標に読書をしています。
「たしかあの人が、あんなことを言っていたな…」というような、うっすら記憶に残る書評を書いていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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