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ぽんきち
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「悪ぃ子はいねがー」 異界から来る来訪者たち
「まれびと」とは異界からやってくる異形の来訪神を指す。国文学者・民俗学者の折口信夫によって提唱された。折口によれば
まれと言ふ語の遡れる限りの古い意義に於て、最少の度数の出現又は訪問を示すものであった事は言はれる。ひとと言ふ語も、人間の意味に固定する前は、神及び継承者の義があったらしい。其側から見れば、まれひとは来訪する神と言ふことになる。ひとに就て今一段階測し易い考へは、人にして神なるものを表すことがあったとするのである。人の扮した神なるが故にひとと称したとするのである。

ある決まった時期、決まった日に、異界から現世を訪うものがある。元々は人が扮しているのだけれども、異様な衣装を身に付け、怖ろしい仮面をつけたその瞬間、何かが憑依したように、「それ」は人を超える。
日本の各地にそうした風習が残っており、年に一度、例えば大晦日、例えば小正月、村の各戸を訪れ、子らを泣かせ、人々に祝福を与え、歓待を受け、やがてまた異界へと戻っていく。
これはそうした「まれびと」を追う写真集である。

大きく、南と北に分けられ、南は九州や沖縄の島々、北は北陸から東北に掛けて、併せて20の地の「まれびと」が現れる。鹿児島悪石島のボゼ、下甑町のトシドン、沖縄石垣島のアンガマ、男鹿半島のナマハゲ、新潟村上のアマメハギ、岩手三陸のスネカ。名も扮装もさまざまな異形のものが練り歩く。
著者の石川直樹は写真家であり、かつ民俗学にも深い関心を持つ。
石川の写真は、単なる旅人の目線ではなく、祭りの内側に入り込み、その空気を捉えるかのようである。「まれびと」自体だけでなく、その地の風景、祭の準備の様子、泣き叫ぶ子供たち、供応する老人たちがフィルムに収められる。
石川による各章冒頭の短文に誘われ、読者は各地の「まれびと」に出会い、「まれびと」が纏う空気に呑み込まれる。
連綿と受け継がれていた来訪神行事の向こう側に、古代からの人々の祈りや畏れが見えてくるようでもある。

巻末に、伊藤俊治、安藤礼二による論考を付す。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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