かもめ通信さん
レビュアー:
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あれやこれやにつくづく嫌気がさして、どこか別の国で暮らしたいと思ったことってありませんか?
正直に言うと、初めてTwitterでこのタイトルを見たとき
(これって嫌韓本?また随分と挑発的なタイトルだなあ。)と思った。
でもちょっと待って!どうやらそうではないらしい。
なんでも“韓国の男性作家チャン・ガンミョンによるフェミニズム小説”だというのだ。
“あの 『82年生まれ、キム・ジヨン』へのアンサー”にもなっているといううたい文句も。
これは気になる。
赤羽にあるという「ころから株式会社」という出版社には覚えがなかったが、
掲示板でぴょんはまさんが『九月、東京の路上で』を出しているところだと教えてくれ、
(それならば、信頼できそうだ)と、手に取ってみた。
こんな書き出して始まる物語は、全編を通じて主人公であるケナの
親密な相手にあれやこれやと打ち明け話をするような
ちょっとくだけた親しげな語り口調で綴られている。
彼女はオーストラリアに留学する。
といっても勉強が目的、というわけではない、
めざすは永住権とその先にある市民権の獲得だ。
そう、彼女は出かけるのではない。
韓国を出て行くつもりなのだ。
ぼられたり、騙されり、巻き込まれたり、差別されたり、
様々な体験と周囲の人々と自分自身に向けるするどい洞察。
オーストラリアでの暮らしぶりと
折々に思い返される韓国でもあれこれによって、
彼女がなぜ韓国が嫌いでなぜ韓国を出て行く気になったのかが
次第に明らかになっていく。
物語が進むにつれてケナは本当にこのまま韓国に戻らないのかどうか、
戻って欲しいような、欲しくないような、
どっちつかずの気持ちのままにその行く末が気になって仕方なくなってきた。
それはおそらく、
ケナが母国で感じていた生きづらさや息苦しさが
読み手である私にも少なからず心当たりがあるものだったからに違いない。
もちろんこれが唯一の答えではないけれど、
確かにこれは
「キム・ジヨンは、どうすれば病まずに暮らせたのか」という問いへの
一つの答えではあった。
あともう少しで読み終えるというタイミングで
授賞式後の会見で日本について問われると
“I became American because I got tired of this culture, too submissive, and so hard to make a dream come true.”
と “辛口のコメント”をしたというエピソードとともに、
米アカデミー賞で、日本出身のカズ・ヒロさんが、
メーキャップ・ヘアスタイリング賞を受賞したというニュースを耳にした。
ああ、そうなんだよね。
この本は確かに“男性作家によって書かれた
女性の生きづらさをテーマに据えたフェミニズム文学”という一面を持っている。
けれども、あるいは、だからこそ、
性別を問わず、生きづらさを感じている総ての人のための、
あるいは生きづらさを抱える人のそばで暮らしている人のための
物語でもある。
(これって嫌韓本?また随分と挑発的なタイトルだなあ。)と思った。
でもちょっと待って!どうやらそうではないらしい。
なんでも“韓国の男性作家チャン・ガンミョンによるフェミニズム小説”だというのだ。
“あの 『82年生まれ、キム・ジヨン』へのアンサー”にもなっているといううたい文句も。
これは気になる。
赤羽にあるという「ころから株式会社」という出版社には覚えがなかったが、
掲示板でぴょんはまさんが『九月、東京の路上で』を出しているところだと教えてくれ、
(それならば、信頼できそうだ)と、手に取ってみた。
ジミョンとは、オーストラリアに行く日に仁川空港で公式に別れたんだよね。
こんな書き出して始まる物語は、全編を通じて主人公であるケナの
親密な相手にあれやこれやと打ち明け話をするような
ちょっとくだけた親しげな語り口調で綴られている。
彼女はオーストラリアに留学する。
といっても勉強が目的、というわけではない、
めざすは永住権とその先にある市民権の獲得だ。
そう、彼女は出かけるのではない。
韓国を出て行くつもりなのだ。
ぼられたり、騙されり、巻き込まれたり、差別されたり、
様々な体験と周囲の人々と自分自身に向けるするどい洞察。
オーストラリアでの暮らしぶりと
折々に思い返される韓国でもあれこれによって、
彼女がなぜ韓国が嫌いでなぜ韓国を出て行く気になったのかが
次第に明らかになっていく。
物語が進むにつれてケナは本当にこのまま韓国に戻らないのかどうか、
戻って欲しいような、欲しくないような、
どっちつかずの気持ちのままにその行く末が気になって仕方なくなってきた。
それはおそらく、
ケナが母国で感じていた生きづらさや息苦しさが
読み手である私にも少なからず心当たりがあるものだったからに違いない。
もちろんこれが唯一の答えではないけれど、
確かにこれは
「キム・ジヨンは、どうすれば病まずに暮らせたのか」という問いへの
一つの答えではあった。
あともう少しで読み終えるというタイミングで
授賞式後の会見で日本について問われると
“I became American because I got tired of this culture, too submissive, and so hard to make a dream come true.”
と “辛口のコメント”をしたというエピソードとともに、
米アカデミー賞で、日本出身のカズ・ヒロさんが、
メーキャップ・ヘアスタイリング賞を受賞したというニュースを耳にした。
ああ、そうなんだよね。
この本は確かに“男性作家によって書かれた
女性の生きづらさをテーマに据えたフェミニズム文学”という一面を持っている。
けれども、あるいは、だからこそ、
性別を問わず、生きづらさを感じている総ての人のための、
あるいは生きづらさを抱える人のそばで暮らしている人のための
物語でもある。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:ころから株式会社
- ページ数:160
- ISBN:9784907239466
- 発売日:2020年01月10日
- 価格:1980円
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