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Wings to fly
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懐かしい本に彩られた物語の、最後を飾るタイトルを見たとき、かの有名な絵本とこの作品のテーマが響きあい、感動が押し寄せた。
たくさん素敵なものが詰まったこの本の、最後のページを閉じたとき、涙がこぼれそうになった。人間は、辛い目にあっている最中に、すごく大切な何かを得たりしているんだなと思って。辛い経験は、同じ辛さを味わっている人への思いやりに変わり、その思いやりは、やがて誰かの傷を癒し勇気を与えることにもなるのだ。

ほのかは、いじめにあい学校へ行けなくなった。居場所を探して町を歩くうちに辿り着いたのは、かなりボロイねずみ色のコンクリートの建物だ。ごろんごろん、とすごい音がして扉が開く、そこは図書館。この場所で、ほのかは「へびおとこ」に出会う。顔の半分が恐竜の皮みたいな緑色のその人は、図書館司書のイヌガミさんだった。

イヌガミさんは、ほのかの人生を変える運命の男なのである。自身も酷いいじめを乗り越えてきたことを伺わせる、彼のキャラクターが実に良い。無表情という鎧で被っていても垣間見える、ナイーブな心根。唯一の友だったに違いない書物に磨かれた知性。「図書館の自由」を盾に無理解な大人と対峙するときの、凛とした勇気。ぶっきらぼうな言葉とは裏腹な優しさ。終盤には微笑ましいプロポーズシーンもあるのだが、そうだよ惚れてしまうよ。

同じく学校に行かれず図書館に避難している中学生のスタビンズ君や、綺麗な司書のうつみさん、彼らと共に図書館業務のお手伝いをしながらほのかの世界は少しづつ明るさを増してゆく。そして、このお話の背景を彩るのは、幾多の懐かしい物語である。

「大好きなドリトル先生シリーズが、あと一冊で読み終わっちゃう。寂しいなー。」
なんて思ったことのある、かつての少年少女たちにも、きっと共感できる部分がたくさんあるだろう。そんな皆さんに、イヌガミさんは言うのだ。
「図書館をなめてもらっちゃ困る。」
この後に彼がずらずら~~っと並べ立てる本の中には、まだ読んでないのもきっとあるはず。

ボロイねずみ色の図書館が、虹色に輝く思い出の場所になった数年後。
エピローグの最後を飾るのはあの本だ。タイトルを見たとき、その有名な絵本とこの作品のテーマが響きあい胸に迫ってきた。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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