かもめ通信さん
レビュアー:
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50そこそこで現役引退!?すっかり身なりを気にしなくなった“かかし”のような田舎のおじさん!?それって本当にあのバンコラン様!?と、半信半疑に読み始めると……。
黒髪を真ん中で分け、巻角の形に両端をねじってまとめ
髭の下にのぞく口角に笑みをちらつかせながら、
ひょいと片眉を上げるおなじみの表情。
けだるく葉巻を構えた手にいくつも光る指輪。
いざそのときになれば、
燕尾服にシルクハット、手には銀の握りのステッキを持ち、
大立ち回りを演じてみせもする。
初めて会ったその日から、
私の心を虜にした魔王と見紛うその男、
おわかりだろう、彼こそはパリ警察を束ねる予審判事、
欧州きっての剣呑な男、ムッシュウ・アンリ・バンコラン!!
これが彼の“最後の事件”と聞いていたから、
再会を楽しみにしつつも、
確実にやってくる別れのときを思うと心が痛い。
そんな思いに囚われながらもやっぱり読まずにはいられなかった待望の1冊が
彼の妖しげな美しさを十二分に引き出す翻訳家和爾桃子さんによる新訳で登場だ。
ロンドンの法律事務所に勤める若手事務弁護士リチャード・カーティスは
ボス弁からパリへの出張を命じられる。
パリに暮らす裕福は依頼人ラルフ・ダグラスが抱えている
少々やっかいな女がらみの問題に
すみやかにしかるべく対処してこいというのだ。
そして現地で頼るべき人物として
二年前、突如現役を引退して
もっぱら釣りと猟で日々を過ごしているというバンコランへの手紙を渡されるのだった。
ところが、カーティスは伝説的な人物バンコランに会う前に
ラルフと共に死体に遭遇してしまう。
殺されていたのはラルフと関係のあった高級娼婦ローズ。
すっかり血を抜かれた美しくも不可解な遺体の側には四つの異なる凶器。
容疑者たちの完璧なアリバイ。
もちろんあえて呼び出すまでもなく、
事件のあるところ、我らがバンコラン様の登場だ。
かつての寸分の隙もなく“魔王”と呼ばれた姿からは想像もつかないような
両肘がすり切れたコーデュロイを身につけ
無精ひげをはやした“かかし”のようないでだちで登場したバンコラン。
どうやらそれは“変装”ではなく、鋭い眼光だけはそのままに
女性と若者に優しい好々爺ぶりを発揮さえする!?
もしかして現役引退と共に人柄も変わってしまったのか?と戸惑う読者を
安タバコの煙に巻きながら、事件は思わぬ展開を。
だがしかし、終わってみればそこはやっぱり、バンコラン様。
相変わらずの“魔王”ぶり。
巻末に収録された真田啓介氏の解説を読んで
作者とバンコランの変遷を知り、
改めてもう一度、書かれた年代順に読み返してみようかなと思っているところ。
私のバンコラン様熱は当分覚めそうにない。
<バンコラン様♡関連レビュー(新訳刊行順)>
蠟人形館の殺人
夜歩く
髑髏城
絞首台の謎
髭の下にのぞく口角に笑みをちらつかせながら、
ひょいと片眉を上げるおなじみの表情。
けだるく葉巻を構えた手にいくつも光る指輪。
いざそのときになれば、
燕尾服にシルクハット、手には銀の握りのステッキを持ち、
大立ち回りを演じてみせもする。
初めて会ったその日から、
私の心を虜にした魔王と見紛うその男、
おわかりだろう、彼こそはパリ警察を束ねる予審判事、
欧州きっての剣呑な男、ムッシュウ・アンリ・バンコラン!!
これが彼の“最後の事件”と聞いていたから、
再会を楽しみにしつつも、
確実にやってくる別れのときを思うと心が痛い。
そんな思いに囚われながらもやっぱり読まずにはいられなかった待望の1冊が
彼の妖しげな美しさを十二分に引き出す翻訳家和爾桃子さんによる新訳で登場だ。
ロンドンの法律事務所に勤める若手事務弁護士リチャード・カーティスは
ボス弁からパリへの出張を命じられる。
パリに暮らす裕福は依頼人ラルフ・ダグラスが抱えている
少々やっかいな女がらみの問題に
すみやかにしかるべく対処してこいというのだ。
そして現地で頼るべき人物として
二年前、突如現役を引退して
もっぱら釣りと猟で日々を過ごしているというバンコランへの手紙を渡されるのだった。
ところが、カーティスは伝説的な人物バンコランに会う前に
ラルフと共に死体に遭遇してしまう。
殺されていたのはラルフと関係のあった高級娼婦ローズ。
すっかり血を抜かれた美しくも不可解な遺体の側には四つの異なる凶器。
容疑者たちの完璧なアリバイ。
もちろんあえて呼び出すまでもなく、
事件のあるところ、我らがバンコラン様の登場だ。
かつての寸分の隙もなく“魔王”と呼ばれた姿からは想像もつかないような
両肘がすり切れたコーデュロイを身につけ
無精ひげをはやした“かかし”のようないでだちで登場したバンコラン。
どうやらそれは“変装”ではなく、鋭い眼光だけはそのままに
女性と若者に優しい好々爺ぶりを発揮さえする!?
もしかして現役引退と共に人柄も変わってしまったのか?と戸惑う読者を
安タバコの煙に巻きながら、事件は思わぬ展開を。
だがしかし、終わってみればそこはやっぱり、バンコラン様。
相変わらずの“魔王”ぶり。
巻末に収録された真田啓介氏の解説を読んで
作者とバンコランの変遷を知り、
改めてもう一度、書かれた年代順に読み返してみようかなと思っているところ。
私のバンコラン様熱は当分覚めそうにない。
<バンコラン様♡関連レビュー(新訳刊行順)>
蠟人形館の殺人
夜歩く
髑髏城
絞首台の謎
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:368
- ISBN:9784488118471
- 発売日:2019年12月20日
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