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DBさん
DB
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フィドルをめぐる謎の話
クレモナのヴァイオリン職人ジャンニの活躍するミステリーです。
今回の事件は、表紙にもなっているノルウェーの伝統楽器ハルダンゲル・フィドルをめぐって起こる殺人だ。

最初に登場するのは、ジャンニの教え子だったリカルド・オルセンです。
彼がジャンニにヴァイオリンの作り方を教わったのは二十年ほど前のこと。
故郷であるノルウェーで成功したリカルドは、講演のために懐かしのクレモナを訪れていた。
その講演を聞きながら、ジャンニは若かりしリカルドの才能や派手な女遊びを思い出します。
そして物語の中心となるハルダンゲル・フィドルが登場する。

普通のヴァイオリンと同じくらいの大きさだが、その表面は渦巻き柄の装飾で飾られ指板には象嵌細工が施されている。
そしてネックの端には若い女性の頭部の彫刻がついていた。
通常の4本の弦の他に、指番の下に、5本の共鳴弦があって独特の音色をもたらすという。
どんなものなのかユーチューブで聴いてみたが、和音になるときもあればならないものもあって独特だった。
お祭りのお囃子みたいに同じ調で一定の節回しを繰り返すような曲ならいいのかも。

というわけで、伝統的ではあるがヴァイオリンのように価値が高くないはずのハルダンゲル・フィドルがなぜ注目されるのかという謎が事件を解く鍵となる。
そのために刑事のアントニオとベルゲンまで旅をするジャンニでしたが、リカルドの妹やジャンニの恋人マルゲリータも加わってフィヨルドの奥深くまで訪れます。
雨と霧に覆われているベルゲンの気候が陽光溢れるクレモナと対比されているのが面白い。
そしてノルウェーの物価の高さにも驚くジャンニ達でしたが。
オスロのコンビニでサンドイッチとジュースを買って日本円で千円以上したのを思い出した。

ペール・ギュントもストーリーに絡ませて出てくるのですが、グリーグの曲はともかくイプセンの描いたペール・ギュントを一言で表せばろくでなしだ。
わたしは絶対にソルヴェイグにはなれないなと思ったことがあるだけに、彼をこき下ろすマルガリータの意見に共感しました。
オーレ・ブルの記念館ではグァルネリ・デル・ジェスに夢中になるジャンニが可愛い。
というわけで、ベルゲン観光しながらジャンニの推理と音楽の蘊蓄が聞けるという二重にも三重にも楽しめる。
ジャンニが魂を込めて作ったヴァイオリンじゃないと歌わないという言葉に、音楽を歌うことについて考えさせられた。

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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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