darklyさん
レビュアー:
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長い物語ながら無駄がなく独特の疾走感が一気に読ませる。北欧ミステリのような味わい。
山の麓の田舎町で猟奇殺人が発生した。被害者は拷問され無残な姿で奇妙に展示された状態で発見された。ニエマンスは捜査の指揮を取るが、有力な手掛かりは得られない。一方、カリムは墓荒らしの捜査から小学校の窃盗事件も関連していることを突き止めたが犯人の目的がよく分からない。そして、第二の犠牲者が発見される。第一の犠牲者と同じ、両目を抉られ、両手首を切断されていた。二人は全く別の事件として捜査にまい進するが、やがて両事件は一つの事件であることが判明する。果たしてクリムゾン・リバー(緋色の川)が意味するものとは何か?
猟奇殺人と並んで物語に緊張感をもたらすのが、二人の主人公が置かれた境遇です。ニエマンスは怒りを抑えきれず行ったフーリガンに対する行きすぎた暴力が問題視され、ほとぼりを冷ますために地方で起こったこの猟奇殺人の捜査を命じられるのですが、フーリガンの死亡により捜査から外されかけている状況、一方カリムは孤児のアラブ人という移民としても人種としてもフランスにおいては厳しい境遇の中、自分の才覚を活かして警察官になったものの地方に飛ばされ、なんとか手柄を挙げたいと切望しています。この二人が持つ焦燥感が物語に独特の疾走感を与え、圧倒的な迫力を持って物語の真相へなだれ込みます。
もちろん彼らは決して模範的な警察官ではありません。ルールは守らないし、自分が正義と信じれば犯罪者を殺すことも厭わない。日本の警察のイメージ(あくまでもイメージです)とはとても対照的です。日本の警察官は決して犯罪者に対して必要以上の暴力はふるわないし、ましてや拳銃などめったに使用しない。しかし悪い警察官は裏金を作ったり、暴力団と癒着したりします。組織の体面を重視し、非難を恐れ表面上のルールは守るが、裏で悪いことをする。彼らは組織重視のサラリーマンであって、正義と言う概念はないとは言えないまでもとても薄い感じがします。
私はそれほどミステリを読まないので迂闊なことは言えませんが、この作品は現在結構流行っていると思われる北欧ミステリによく見られる要素を多分に含んでいる気がします。殺人の背後に過去の忌まわしい出来事が(たいていは女性や子供など弱い立場の者が犠牲になることが多い)があり、主人公は推理だとか閃きというよりは、地道な捜査の結果事件を解決するというパターンです。
この作品はご存知の通り映画化され大ヒットしました。脚本には原作者も参加したようで私がとやかく言うのはおこがましいのですが、あまりにも話を端折りすぎていて別の意味で疾走感がありすぎ、映画だけ観た人で細かいところもまで分かる人はいないのではないかと思います。その代わり主人公がジャン・レノとヴァンサン・カッセルということでキャラが立ちすぎ、まるでフランス版「あぶない刑事」のような感じになっています。実際に「あぶない刑事」を観たことはないのですが。雰囲気も結末も小説とはかなり違っています。
映画に対する私の評価は決して高くありませんが、小説はとても良くできていると感心しました。細かい設定も必ずその意味があり、長い小説ながら無駄がなく、前述の通り物語に独特の疾走感があり飽きさせません。映画では「クリムゾンリバー2」という続編が作られておりますが、これは監督によるオリジナルストーリーのようです。録画はしているのですが観ようか迷っています。
猟奇殺人と並んで物語に緊張感をもたらすのが、二人の主人公が置かれた境遇です。ニエマンスは怒りを抑えきれず行ったフーリガンに対する行きすぎた暴力が問題視され、ほとぼりを冷ますために地方で起こったこの猟奇殺人の捜査を命じられるのですが、フーリガンの死亡により捜査から外されかけている状況、一方カリムは孤児のアラブ人という移民としても人種としてもフランスにおいては厳しい境遇の中、自分の才覚を活かして警察官になったものの地方に飛ばされ、なんとか手柄を挙げたいと切望しています。この二人が持つ焦燥感が物語に独特の疾走感を与え、圧倒的な迫力を持って物語の真相へなだれ込みます。
もちろん彼らは決して模範的な警察官ではありません。ルールは守らないし、自分が正義と信じれば犯罪者を殺すことも厭わない。日本の警察のイメージ(あくまでもイメージです)とはとても対照的です。日本の警察官は決して犯罪者に対して必要以上の暴力はふるわないし、ましてや拳銃などめったに使用しない。しかし悪い警察官は裏金を作ったり、暴力団と癒着したりします。組織の体面を重視し、非難を恐れ表面上のルールは守るが、裏で悪いことをする。彼らは組織重視のサラリーマンであって、正義と言う概念はないとは言えないまでもとても薄い感じがします。
私はそれほどミステリを読まないので迂闊なことは言えませんが、この作品は現在結構流行っていると思われる北欧ミステリによく見られる要素を多分に含んでいる気がします。殺人の背後に過去の忌まわしい出来事が(たいていは女性や子供など弱い立場の者が犠牲になることが多い)があり、主人公は推理だとか閃きというよりは、地道な捜査の結果事件を解決するというパターンです。
この作品はご存知の通り映画化され大ヒットしました。脚本には原作者も参加したようで私がとやかく言うのはおこがましいのですが、あまりにも話を端折りすぎていて別の意味で疾走感がありすぎ、映画だけ観た人で細かいところもまで分かる人はいないのではないかと思います。その代わり主人公がジャン・レノとヴァンサン・カッセルということでキャラが立ちすぎ、まるでフランス版「あぶない刑事」のような感じになっています。実際に「あぶない刑事」を観たことはないのですが。雰囲気も結末も小説とはかなり違っています。
映画に対する私の評価は決して高くありませんが、小説はとても良くできていると感心しました。細かい設定も必ずその意味があり、長い小説ながら無駄がなく、前述の通り物語に独特の疾走感があり飽きさせません。映画では「クリムゾンリバー2」という続編が作られておりますが、これは監督によるオリジナルストーリーのようです。録画はしているのですが観ようか迷っています。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:500
- ISBN:9784488214104
- 発売日:2018年11月30日
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