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かもめ通信
レビュアー:
いまこの世界に「独裁者のブーツ」の靴音が聞こえますか?
こだわりの出版社「共和国」が、ヨゼフ・チャペックの本を出すと聞いたときから、この本は絶対買う!と決めていた。

こういうと「え?カレルの間違いでは?」と思う方もいるかもしれないが、この本の主役は間違いなくヨゼフ・チャペック、カレル・チャペックのお兄さんだ。

日本ではカレルほど有名ではないが、常にカレルの協力者であり、小説や戯曲を共作し、カレルの作品の装丁や挿絵なども担当、カレルを前面に押し出してその活動を支えるだけでなく生活面でもサポートをしていた人物。
同時に自身もジャーナリストとしても文筆家としても画家としても、多くの作品を残している多才な人だった。

身体の弱かった弟の面倒をよく見るようにという幼いころの母の言いつけを生涯守り続けた兄は、カレルを看取った後、チェコに侵攻したナチスドイツ軍によって“政治犯”として捕らえられ、収容所で亡くなっている。

日本語版オリジナル編集の本書は、その前半で連作『独裁者のブーツ』をはじめ「反ファシズム」をテーマにした1コマ漫画や諷刺画を豊富に収録。
ただ単に作品を並べるだけでなく、そうした絵がどのような形で発表されていたかがわかるように、当時チャペック兄弟が編集に携わっていた新聞の紙面を紹介するなどの気配りも行き届いている。

後半には、世代の異なる2人のチェコ人研究者による非常に興味深い寄稿の他、本書の翻訳と編集を手がけた増田幸弘、増田集のお二方によって編纂されたヨゼフ・チャペックの生涯をまとめた記事が写真付きで収録されていてこちらもなかなかの読み応え。
とりわけ収容所内でのヨゼフの様子が興味深かった。

ヨゼフ・チャペックファンにとってはもちろん必読の書。
カレル・チャペックは知っているけれど、ヨゼフは?という読者もぜひこの機会に。
チャペック兄弟のことはほとんど知らないけれど、風刺画や一コマ漫画に興味があるという読者や、ジャーナリズムに興味があるという読者にもお薦め。

この本を読んだら、耳を澄ませ、目をこらしてみずにはいられない。
どこからか靴音が響いてきてはいないかと。


<ヨゼフ・チャペック&カレル・チャペック関連レビュー>
人造人間―ヨゼフ・チャペックエッセイ集
チャペックの本棚―ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン
園芸家12カ月
カレル・チャペック: 小さな国の大きな作家
いろいろな人たち―チャペック・エッセイ集
絶対製造工場
北欧の旅―カレル・チャペック旅行記コレクション
カレル・チャペック短編集
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2236 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2019-11-27 05:34

    只今掲示板にて
    「ゆったり旅する中欧4カ国 #本で旅する世界旅行」開催中。
    チェコ・スロバキア・ハンガリー・ポーランドの中欧4カ国を巡る旅
    12月16日までやっていますので、よかったぜひご参加ください。
    https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no372/index.html?latest=20

  2. No Image

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