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星落秋風五丈原
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デビュー作にして30ヵ国での出版と配信ドラマ化が決定
 黒をバックに咲き誇る色あざやかな花。その中に眠っている少女。眠り姫というには随分とふくよかでノースリーブ。まるで夏の中にいるみたい。彼女の名前はアリス。不思議の国に迷い込んだ少女と同じ名前のヒロイン。彼女もやはり迷っていた。父親はいい人なのかどうかと。

 母親と自分に酷いDVを繰り返す父親が「炎に焼かれたらいい父親になるんじゃないか」と思ったアリスは、ある日本当に両親を火事で喪う。彼女の前に現れた祖母と“花たち”と呼ばれる女性達は、花でメッセージを伝える方法を教える。ところがアリスはある出来事から、この家族も喪ってしまう。

 本編では九歳、十六歳、二十六歳と意図的に間を抜いて、ヒロインの成長と両親に纏わる謎を綴る。父親の虐待にあっていながら、自分もまた似たような男性に惹かれるのは読んでいて非常に痛々しい。

 ヒロインが喪失と再生を繰り返すのは、モチーフとなっている花に擬せられているからだ。オーストラリアの赤い大地で、どんな過酷な状況においても美しい花を咲かせ、実を結び、季節が廻ればまた新しい花を咲かせる。その生き方は、自身も虐待経験者だったという著者がヒロインを含めた女性達に託したメッセージともいえる。

 オーストラリアのプロデューサー、ブルーナ・パパンドレアの Made Up Storiesが映像化権を獲得。配信ドラマ化が予定されている。
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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