darklyさん
レビュアー:
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宇宙と宇宙をつなぐとありますが多宇宙論の話ではありません。純粋な数学の話です。近年読んだ科学技術系の本で1番です。
整数論の難問であるABC予想を知っていますか?過去の提起された整数論予想は難問が多く、未だ解決の端緒さえ見いだせないものも沢山あります。フェルマーの最終定理こそワイルズによって証明されましたが、20世紀の天才ジョン・ナッシュをもってしても歯が立たず一説によればその研究が彼の精神の変調をもたらしたという素数分布に関する難問リーマン予想を始め、双子素数予想、ゴールドバッハ予想などABC予想以外にも数多くの問題が残されています。
この整数論がなぜ難しいかと言えば、それは足し算と掛け算が絡み合っているからだということです。1+1=2、それに1を足すと2というように整数は足し算によって作られていきます。しかし例えば16という数字は2の4乗と掛け算によっても表現されます。17は素数であり1×17としか表現できませんが、素数というのは整数の中でとりわけ掛け算の色彩が強い数だと言えます。整数の並びの中で約数がない素数が現れますが、整数とは足し算と掛け算が混ざり合っておりその規則が分からないのです。人類は最も数学の基本であると思っている足し算や掛け算、そして整数についても何もわかっていないとも言えるのです。
2012年に京都大学の天才数学者望月新一教授がABC予想の証明論文を発表しました。その論文は現在に至るまで未だ査読中であり証明が正しいのか正しくないのかという結論は出ておりません。その原因は望月教授が証明に使った革命的で難解な数学的手法にあります。それはIUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論)というものです。宇宙際というのは(inter universe)であり国際(international)の宇宙版です。しかしそれはあくまで数学の世界における宇宙であり実際の宇宙ではありません。
この理論は世界でも理解している数学者が少なくかつ現在の数学のパラダイムを根底から覆すほどのインパクトのある理論なのです。したがって素人相手に普通に解説したところで理解できるわけもなく筆者は不正確なことを百も承知でアナロジーや比喩を多用してとても分かりやすく、かつとても知的興奮を覚える内容に仕上げています。
理論の内容もしくはイメージについて私が不正確な紹介をしたところで意味がないのですがざっくりとだけ言いますと、絡み合っている足し算構造と掛け算構造を分離するために異なる数学の舞台を設定し、その舞台間で対称性の群を用いて情報をやり取りし、その結果生じる宇宙際不定性を定量的に評価して値を出すことができるというものです。まあなんのこっちゃですね。当然私も本質的に理解などできるわけもないのですが、イメージだけはかなり伝わる本書の内容となっています。
実はこの理論はきっかけはそうであってもABC予想を証明するための目的で考え出されたのではなく、大事なのはIUT理論の方なのです。IUT理論の応用の一つとしてABC予想があるということであり、世紀の難問であるABC予想の証明も単なる通過点に過ぎないかもしれないのです。普通の数学者ならABC予想を証明し名声を得て賞を取ることに汲々としそうですが、望月教授は賞にも名声にもあまり興味はなさそうです。
このように凄い理論を筆者がなぜ解説できるのかと言えば、筆者も望月教授と同じ京大の数学者でこの理論の構築過程において毎週二人でミーティングをしていたそうです。筆者も天才と言えるほどの数学者でしょうがその人でも様々な質疑応答などを経て理解できたわけで論文だけ読んで理解するのは数学者でも相当困難なようです。
本書は数学にロマンを感じる方には諸手を挙げてお勧めしたいと思います。数学が苦手な方でも本理論についての数式は一切出てきませんしとても楽しい読み物となっていると思います。私たちはひょっとするとニュートンやガウスのような数学のパラダイムを一変させた天才たちに比肩しうる人と同じ時代に同じ日本に生きているのかもしれません。このエポックメイキングかもしれない理論にはこれからも注目していきたいと思います。
この整数論がなぜ難しいかと言えば、それは足し算と掛け算が絡み合っているからだということです。1+1=2、それに1を足すと2というように整数は足し算によって作られていきます。しかし例えば16という数字は2の4乗と掛け算によっても表現されます。17は素数であり1×17としか表現できませんが、素数というのは整数の中でとりわけ掛け算の色彩が強い数だと言えます。整数の並びの中で約数がない素数が現れますが、整数とは足し算と掛け算が混ざり合っておりその規則が分からないのです。人類は最も数学の基本であると思っている足し算や掛け算、そして整数についても何もわかっていないとも言えるのです。
2012年に京都大学の天才数学者望月新一教授がABC予想の証明論文を発表しました。その論文は現在に至るまで未だ査読中であり証明が正しいのか正しくないのかという結論は出ておりません。その原因は望月教授が証明に使った革命的で難解な数学的手法にあります。それはIUT理論(宇宙際タイヒミュラー理論)というものです。宇宙際というのは(inter universe)であり国際(international)の宇宙版です。しかしそれはあくまで数学の世界における宇宙であり実際の宇宙ではありません。
この理論は世界でも理解している数学者が少なくかつ現在の数学のパラダイムを根底から覆すほどのインパクトのある理論なのです。したがって素人相手に普通に解説したところで理解できるわけもなく筆者は不正確なことを百も承知でアナロジーや比喩を多用してとても分かりやすく、かつとても知的興奮を覚える内容に仕上げています。
理論の内容もしくはイメージについて私が不正確な紹介をしたところで意味がないのですがざっくりとだけ言いますと、絡み合っている足し算構造と掛け算構造を分離するために異なる数学の舞台を設定し、その舞台間で対称性の群を用いて情報をやり取りし、その結果生じる宇宙際不定性を定量的に評価して値を出すことができるというものです。まあなんのこっちゃですね。当然私も本質的に理解などできるわけもないのですが、イメージだけはかなり伝わる本書の内容となっています。
実はこの理論はきっかけはそうであってもABC予想を証明するための目的で考え出されたのではなく、大事なのはIUT理論の方なのです。IUT理論の応用の一つとしてABC予想があるということであり、世紀の難問であるABC予想の証明も単なる通過点に過ぎないかもしれないのです。普通の数学者ならABC予想を証明し名声を得て賞を取ることに汲々としそうですが、望月教授は賞にも名声にもあまり興味はなさそうです。
このように凄い理論を筆者がなぜ解説できるのかと言えば、筆者も望月教授と同じ京大の数学者でこの理論の構築過程において毎週二人でミーティングをしていたそうです。筆者も天才と言えるほどの数学者でしょうがその人でも様々な質疑応答などを経て理解できたわけで論文だけ読んで理解するのは数学者でも相当困難なようです。
本書は数学にロマンを感じる方には諸手を挙げてお勧めしたいと思います。数学が苦手な方でも本理論についての数式は一切出てきませんしとても楽しい読み物となっていると思います。私たちはひょっとするとニュートンやガウスのような数学のパラダイムを一変させた天才たちに比肩しうる人と同じ時代に同じ日本に生きているのかもしれません。このエポックメイキングかもしれない理論にはこれからも注目していきたいと思います。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:304
- ISBN:9784044004170
- 発売日:2019年04月25日
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