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献本書評
休蔵さん
休蔵
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三京祭である。新潮社、角川文庫、講談社タイガという3社が1つのシリーズを京極夏彦とともに作り上げた祭である。しかも3か月連続だ、わっしょーい!
 舞台は戦後まもない昭和29年。
 高尾山における是枝美智栄失踪事件に端を発するものだ。
 是枝捜索を依頼するため、友人の篠村美祢子は薔薇十字探偵社を訪れていた。
 しかし、榎木津礼二郎に仕事を依頼したいという美祢子の思いは、探偵助手の益田に阻まれていた。
 人探しなどは助手の仕事だという。
 それに反発する美祢子。
 そんなやり取りの最中に呉美由紀は探偵社の扉を開いた。
 そして、この案件に巻き込まれることに・・・

 美祢子と美由紀は高尾山に。
 薔薇十字探偵社とは関係なく高尾山に向かうことになったのだ。
 じつは美智栄失踪は、大きな謎がはらまれていた。
 群馬県迦葉山で一人の女性の遺体が発見された。
 その遺体は、なぜか美智栄の服装を身にまとっていたのだ。
 帽子は美祢子が美智栄にあげたものだから、遺体が美智栄の服を着ていたのは確実だ。
 なぜ、迦葉山の女性遺体は美智栄の服を着ていたのか、そもそも美智栄はなぜ失踪してしまっているのか。
 謎が謎を呼びながら、物語は淡々と進んでいく。
 
 本書のタイトルは『天狗』である。
 舞台となった高尾山には天狗伝説があるという。
 このようなささやかな舞台設定を最大限に活かしながら、奇天烈な登場人物を配合しつつ物語を醸すところに京極夏彦の真骨頂があると思う。
 天狗はあくまでエッセンスの1つに過ぎないが、その注ぎ方の妙が面白い。

 そして、漢字の選択も好ましい。
 たまたまは偶々、分かるは判る、いいながらは云い乍ら、いるは居る、できは出来、いいは良い、全ては凡て、せいぜいは精精、よく知るは能く知る、もっともは尤も、やはりは矢張り、さらにふざけは巫山戯、たとえは仮令等々。
 さすがに巫山戯や仮令にはルビがふられていた。
 いずれせによ、あえての漢字の選択は物語に時代性を付加させる効果があり、ややもすれば現代劇のように読んでしまいがちな読者にブレーキをかけてくれる気がした。
 しかし、読みにくいわけではなく、それをすんなりと読ませるところに京極夏彦の力があると個人的には思う。

 本書は『今昔百鬼拾遣』という3シリーズの1冊。
 なんと新潮社、角川文庫、講談社タイガという3社横断の取り組みだ。
 京極夏彦という力のある作家だからこそ許される大胆な取り組み。
 きっと、内容により売り上げに差が出てしまうのだろうが、そこに不満や不安はないのだろうか、と余計なことを思ってみたが、本書を読みその考えは一掃された。
 次も読みたい!
 『河童』も『鬼』も!!
 きっと、それぞれの伝説の舞台で、伝説をうまく利用しながら物語を展開させていることだろう。
 他社のシリーズ本も読みたいという気持ちは、きっと多くの読者に共通するに違いない。
 そして、3社とも同じような売り上げを記録するはず。
 いや、3社の売り上げは余計なお世話だが、1冊読めば3冊とも読みたくなるということを言いたかっただけ。
 
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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