かもめ通信さん
レビュアー:
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行間からスパイスの香りがしなくなっても、ラヒリはやっぱりラヒリなんだな。
たとえば道で
恋愛をして、ことによるとずっといっしょにいることになったかもしれない
一人の男性とときどき行き会う。
彼は彼女の女ともだちと暮らしていて、子どもも二人いる。
そんな彼と彼女は立ち話をし、時には一緒にコーヒーを飲み、
少しの間並んで歩くこともある。
たとえばトラットリアで
時々見かける父娘の様子に少しばかり心を痛める。
目の前の父娘のことを考えていたはずなのに
心はいつの間にか彼女が15歳の時に突然死んでしまった父親の元へ飛んでいく。
自分のなかで
エッセイ 『べつの言葉で』につづいて、
ジュンパ・ラヒリがイタリア語で書きあげた初めての長篇小説は、
日記のように綴られた掌編の積み重ねで構成されている。
おそらくはイタリアの、
生まれ育った街に暮らす「わたし」。
大学の講師をしている彼女は、
かつて一緒に暮らしていた恋人とも別れ、
離れて暮らす母を気にかけながらも
一人暮らしをしている。
歩道で、仕事場で、トラットリアで、広場で、病院の待合室で、
本屋で、美術館で、スーパーで………。
なじみのある場所でも、たまたま訪れた場所でも、
一人でいても、誰かといても、
いつも彼女のそばにいるのは孤独。
街の名前どころか、
主人公の名前すらも明かされない。
一見とても寂しい物語のようでいて
読み終えたあとなぜか心に温かいものが残るのは
彼女の孤独が
彼女だけの、彼女特有のものではなく
あなたやわたしと共にもあるもののように思えるからかもしれない。
恋愛をして、ことによるとずっといっしょにいることになったかもしれない
一人の男性とときどき行き会う。
彼は彼女の女ともだちと暮らしていて、子どもも二人いる。
そんな彼と彼女は立ち話をし、時には一緒にコーヒーを飲み、
少しの間並んで歩くこともある。
たとえばトラットリアで
時々見かける父娘の様子に少しばかり心を痛める。
目の前の父娘のことを考えていたはずなのに
心はいつの間にか彼女が15歳の時に突然死んでしまった父親の元へ飛んでいく。
自分のなかで
孤独でいることがわたしの仕事になった。と彼女は言う。
それは一つの規律であり、わたしは苦しみながらも完璧に実行しようとし、とも。
慣れているはずなのに落胆させられる。
エッセイ 『べつの言葉で』につづいて、
ジュンパ・ラヒリがイタリア語で書きあげた初めての長篇小説は、
日記のように綴られた掌編の積み重ねで構成されている。
おそらくはイタリアの、
生まれ育った街に暮らす「わたし」。
大学の講師をしている彼女は、
かつて一緒に暮らしていた恋人とも別れ、
離れて暮らす母を気にかけながらも
一人暮らしをしている。
歩道で、仕事場で、トラットリアで、広場で、病院の待合室で、
本屋で、美術館で、スーパーで………。
なじみのある場所でも、たまたま訪れた場所でも、
一人でいても、誰かといても、
いつも彼女のそばにいるのは孤独。
街の名前どころか、
主人公の名前すらも明かされない。
一見とても寂しい物語のようでいて
読み終えたあとなぜか心に温かいものが残るのは
彼女の孤独が
彼女だけの、彼女特有のものではなく
あなたやわたしと共にもあるもののように思えるからかもしれない。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:168
- ISBN:9784105901592
- 発売日:2019年08月23日
- 価格:1836円
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