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Wings to fly
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こんなに長大で波乱万丈の物語だったとは!読み始めたら止まらない、挿絵も美しい完訳版。
有名なお話だが、ストーリーをざっくりとまとめてみる。

1.王子様と乞食の少年が偶然に出会う。
2.ほんの気まぐれで衣服を取り換えてみたら、双子のようにそっくりだった。
3.ひょんなことから周囲に誤解され、王子は乞食として、乞食は王子として暮らすはめになる。
4.誤解がとけて、めでたしめでたし。

ほら、短いと思うでしょう?ところが「完全版」の本書は33章+むすびで約500ページもある。雰囲気のある挿絵も素晴らしい。

舞台は16世紀半ば、王子の父上はヘンリー4世、乞食生活を余儀なくされた王子は後のエドワード6世だ。その他、ジェイン・グレイやエリザベス王女など、英国史を彩る人物も続々と登場する。ロンドンの貧困街とやんごとなき宮廷の二か所で繰り広げられるエピソードは、ハラハラドキドキの連続である。

突然宮廷に放り込まれた乞食の少年トムと、ロンドンの下町を放浪するエドワード王子。自分は王子だと主張する乞食少年も、記憶や礼儀作法を忘れた王子様も、周囲は頭がおかしい人として扱う。しかし、彼らはふたりとも、虚実に対する曇りのない目を持っている。純真で心優しく、年齢相応の欠点も持つ少年たちの体験を通して、英国チューダー王朝時代の貴族と庶民の暮らしが生き生きとユーモラスに描かれてゆく。

後にケント伯となるマイルズ・ヘンドンは、忘れがたい脇役だ。彼は乞食の少年が本物の王子だとは知らないまま、その勇気に感心して保護者となり、剣を振るって何度も少年の命を救う。史実として、ケント伯は「国王の面前にあっても椅子に座ってかまわない特権」を賜ったそうだ。ヘンドンがその特権と伯爵の地位を得て、奪われた領地を取り返すに至る顛末は、誠に心温まるサイドストーリーである。

クライマックスは、父王亡き後の戴冠式にやってくる。いやもう、盛り上げかたの上手いこと。そして、真実の身分を明かす決め手となる“あるもの”をめぐるエピソードがまた微笑ましい。

人が内面に持つ尊いものについて、優しく語りかけるこのお話は、「お行儀の良い、可愛いわが子の」ふたりのお嬢さんに捧げられている。お話の名手マーク・トウェインは、良きパパでもあったに違いない。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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