yukoさん
レビュアー:
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娘よ、あなたに会えて本当に幸せです。あなたの母にしてくれて、ありがとう。あなたは生まれてきてよかったと思えますか?
大阪の下町生まれ。どうしようもないクズの父親の元から母と姉と夜逃げして、祖母と暮らしたとにかく貧乏な日々。
物書きになりたいと上京した夏子のもとに、姐の巻子とその娘、緑子と泊まりがけでやってきた3日間の第一部。
その8年後が第二部。
何とか物書きとして食べて行けるようになった夏子。
彼女には夫も恋人もいない、
そしてセックスができない。どんなに愛している人とも。
それでもどうしても子供が欲しいと切望する夏子。
それはただ、「会いたい」
我が子に「会いたい」という強い強い思いなのでした。
芥川賞の「乳と卵」を私は読んでないのですが、
第一部は「乳と卵」の部分で、
そこに8年後の第二部を合わせた1冊の本になっています。
どん底に貧しい生活を送ってきた夏子だけれど、姉に、母に、祖母に囲まれて、貧乏を不幸と感じず強くたくましく生きてきて、大阪を出て一人生きています。
彼女が望むのは子供。
自分の子供にどうしても会いたいと。
登場する女性たちはそれぞれ生き方は全く違うけれど、とにかく強くたくましい。
いえ、強くたくましくならざるを得なかったというべきでしょうか・・・
それに比べて男性登場人物はみんなクズばっかりで(笑)
その中で唯一ちゃんとした男性は、精子提供で生まれた当事者である逢沢さんだけ。
自分の本当の生物学上の父親を知らない男性=逢沢さん、だけが力で相手をねじ伏せることもなく、夏子のことをきちんと認めてくれる、ということが物語を象徴しているようにも思えました。
著者が朝日新聞のインタビューで、
『子どもを産んだ今でも、女性にとって産まない方が自然なのではという気持ちがある。出産は利己的なもの。産んだ側の人間として、自分は何をしたのかを手放さずに考え続けたい』
と答えていましたが、
確かに、「別に産んでくれと頼んだわけではない」と考える子供は少なからずいるでしょうし、一度ぐらいは反抗期にそんなことを思ったことがある人は多いかもしれませんね・・・
夏子の友人で、作家仲間の遊佐が、
「その存在に出会うために自分が産まれて、今まで生きてきたとしか思えなくなるんだよね。」
「自分にとって最高の存在で、最大の弱点。それが日に日に自分の外で大きくなって、事故とか病気で死ぬかもしれないことをいっしゅんでも考えると息もできないくらいに怖い。」
そう自分の子供について語るシーンで、あぁ私もそうだったなと。
夜中に、我が子が交通事故に遭うということを想像したり夢を見たりして、怖くて悲しくて、子供部屋のベッドですやすや眠る顔を見て、号泣しながらベッドの下の床に丸まって寝たことを思い出しました。
さすがに20歳もすぎた最近はないですが。
我が子に会うまで私は、愛というものが何か、
わかっていたつもりだけれど、全くわかっていなかったのだと、そう強く思います。
亡き夫には大変申し訳ないですが(笑)
よく子供は親を選べないといいますが、私は娘が私を選んでくれたのだと思ってきて、
だから、選んでもらえたというこの幸せを決して忘れることなく、彼女の母親にしてもらえたことを感謝して、選んでもらえたことに必ず愛情でお返ししようと思ってきました。
娘に会えたこと、
本当に本当に幸せなのです。
だから娘が、生まれてきてよかったと思える人生を歩んでほしいなと願っています。
ラストシーン、本当にあたたかくて、希望の光がいっぱいで、胸がいっぱいになりました。
夏子の選択は身勝手なのかもしれない。
でもそれほどまでに会いたかったんです。我が子に。
どうか幸せな人生を二人歩んでほしいと願える、そんな物語に胸がいっぱいになりました。
物書きになりたいと上京した夏子のもとに、姐の巻子とその娘、緑子と泊まりがけでやってきた3日間の第一部。
その8年後が第二部。
何とか物書きとして食べて行けるようになった夏子。
彼女には夫も恋人もいない、
そしてセックスができない。どんなに愛している人とも。
それでもどうしても子供が欲しいと切望する夏子。
それはただ、「会いたい」
我が子に「会いたい」という強い強い思いなのでした。
芥川賞の「乳と卵」を私は読んでないのですが、
第一部は「乳と卵」の部分で、
そこに8年後の第二部を合わせた1冊の本になっています。
どん底に貧しい生活を送ってきた夏子だけれど、姉に、母に、祖母に囲まれて、貧乏を不幸と感じず強くたくましく生きてきて、大阪を出て一人生きています。
彼女が望むのは子供。
自分の子供にどうしても会いたいと。
登場する女性たちはそれぞれ生き方は全く違うけれど、とにかく強くたくましい。
いえ、強くたくましくならざるを得なかったというべきでしょうか・・・
それに比べて男性登場人物はみんなクズばっかりで(笑)
その中で唯一ちゃんとした男性は、精子提供で生まれた当事者である逢沢さんだけ。
自分の本当の生物学上の父親を知らない男性=逢沢さん、だけが力で相手をねじ伏せることもなく、夏子のことをきちんと認めてくれる、ということが物語を象徴しているようにも思えました。
著者が朝日新聞のインタビューで、
『子どもを産んだ今でも、女性にとって産まない方が自然なのではという気持ちがある。出産は利己的なもの。産んだ側の人間として、自分は何をしたのかを手放さずに考え続けたい』
と答えていましたが、
確かに、「別に産んでくれと頼んだわけではない」と考える子供は少なからずいるでしょうし、一度ぐらいは反抗期にそんなことを思ったことがある人は多いかもしれませんね・・・
夏子の友人で、作家仲間の遊佐が、
「その存在に出会うために自分が産まれて、今まで生きてきたとしか思えなくなるんだよね。」
「自分にとって最高の存在で、最大の弱点。それが日に日に自分の外で大きくなって、事故とか病気で死ぬかもしれないことをいっしゅんでも考えると息もできないくらいに怖い。」
そう自分の子供について語るシーンで、あぁ私もそうだったなと。
夜中に、我が子が交通事故に遭うということを想像したり夢を見たりして、怖くて悲しくて、子供部屋のベッドですやすや眠る顔を見て、号泣しながらベッドの下の床に丸まって寝たことを思い出しました。
さすがに20歳もすぎた最近はないですが。
我が子に会うまで私は、愛というものが何か、
わかっていたつもりだけれど、全くわかっていなかったのだと、そう強く思います。
亡き夫には大変申し訳ないですが(笑)
よく子供は親を選べないといいますが、私は娘が私を選んでくれたのだと思ってきて、
だから、選んでもらえたというこの幸せを決して忘れることなく、彼女の母親にしてもらえたことを感謝して、選んでもらえたことに必ず愛情でお返ししようと思ってきました。
娘に会えたこと、
本当に本当に幸せなのです。
だから娘が、生まれてきてよかったと思える人生を歩んでほしいなと願っています。
ラストシーン、本当にあたたかくて、希望の光がいっぱいで、胸がいっぱいになりました。
夏子の選択は身勝手なのかもしれない。
でもそれほどまでに会いたかったんです。我が子に。
どうか幸せな人生を二人歩んでほしいと願える、そんな物語に胸がいっぱいになりました。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:545
- ISBN:9784163910543
- 発売日:2019年07月11日
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