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三毛ネコ
レビュアー:
ケーキが切れない少年たち。実際に読んでみると、衝撃的な内容です。著者が行っているような取り組みをもっと広げてほしいです。
著者は精神科医。医療少年院で勤務し、発達障害や知的障害を持った子どもの問題行動の改善に取り組んできた。

勤務時に、暴行・傷害事件を起こして少年院に入っていた少年の担当をすることになる。しかし、あまり会話が進まないので、複雑な図形の模写をさせてみた。すると、その少年は正しいどころか、正解に近い図形すら書くことができなかったのだ。この結果は、その少年にとって世の中のこと全てが歪んで見えている可能性があることを示している。その他にも、高校生なのに九九を知らない、日本地図を見てもそれが何の図形か分からない、今の総理大臣が誰なのか知らないといった少年もいた。彼らはみんな勉強が苦手だという。勉強ができず、学校が面白くないので非行に走ったという少年もいる。

しかし、彼らがすべて勉強が嫌いかというと、そうでもない。著者が少年院で頭を使うグループトレーニングをすると、ほぼ全員が2時間も飽きることなく取り組めたという。彼らは勉強に飢えていたのだ。

そして医療少年院では、題名の通り「ケーキを3等分できない」非行少年たちがいた。実際にどう切ったかは本書を読んでいただくとして、この課題ができない少年たちが凶悪犯罪を起こしているのが問題なのだ。彼らに、非行の反省などの従来行われていた矯正教育は役に立たない。

少年たちに10万円を1週間以内に用意するとしたら、どうするかと尋ねてみる。どんな方法でもいいと言うと、親族から借りる、消費者金融から借りる、といった答えが返ってくる。ここまではまだいい。盗む、騙し取る、銀行強盗をする、などが同列の選択肢として出てくるのだ。先の見通しを持たず、計画を立てられないために出てくる答えである。

少年院にいる少年たちは、見る力や聞く力といった認知機能に問題がある。だから相手の態度を誤解してすぐ傷害事件を起こしたりするのである。

非行に走る少年の色々な問題点が分かる。中には衝撃的な事実がいくつもある。しかし、何が問題なのかを正しく捉え、粘り強く対応していけば道は開けるのではないか。非行少年の問題点を理解し、それに対する著者の取り組みを知って、少しだけ希望を持つことができた。
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三毛ネコ
三毛ネコ さん本が好き!1級(書評数:871 件)

フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。

書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。

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