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三太郎さん
三太郎
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小川洋子さんのちょっと変わった短編集を読んでみた。10篇の独立した短編からなるが、小説の最後に歴史上の実在の人物のプロフィールが付いている。
小川洋子さんのちょっと変わった短編集を読んでみた。10篇の独立した短編からなるが、小説の最後に歴史上の実在の人物のプロフィールが付いている。でもその人物が小説に登場するという訳でもない。

例えば、第五話の「測量」の最後には1982年に50歳で亡くなったピアニストのグレン・グールドのちょっと変わったエピソードが書かれている。

しかし、小説の登場人物はピアニストでも音楽家でもない、引退して視力がなくなった老人とその孫である。老人は頭になかに口笛を吹く虫を飼っていて、老人は一人でその音楽に聞き入っていることがある。グールドは子供の頃に、掃除機の騒音の中から美しい和音が鳴り響いてくるのを聞いたと証言しているが、そのエピソードがもとになったのかも。老人の場合は老化による耳鳴りだったかもしれないが。

第二話の「散歩同盟会長への手紙」の主人公は小説家を目指しながら心を病んで精神病院で生涯を終えた人物であるが、彼の場合は実在の人物のエピソードが生かされているようだ。

既に狂気に侵された女性(第一話)や次第に狂気に侵されつつある女性(第九話)の話は狂気の描写が印象的だ。暴れるわけではないが、狂気はいつも自分や他者への暴力性を帯びている。

最後の「十三人きょうだい」の終わりには明治の植物学者・牧野富太郎には13人の子供がいたと紹介されているが、小説の主人公は十三人兄弟の末弟である叔父で、彼の話を姪が語っている。牧野と関係あるのかどうかはわからないが、どこかメルヘンチックで死への旅たちを連想させる印象的な物語だった。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:829 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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