darklyさん
レビュアー:
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数々のSFの名作を彷彿させるだけでなく、現代の物理学をSF的に表現しようと果敢に挑戦しており読んでいてワクワクします。三部作の一作目ですがこの大風呂敷をどのように収束させていくのか楽しみです。
この本を本屋で表紙を初めて見た時、パラボラアンテナが付いたイージス艦に見えて海戦物のSFなのかと勘違いしていました。
ナノマテリアルの研究者である汪淼は怪しい科学団体「科学フロンティア」へ潜入する中で、自分の視野にカウントダウンしている数字があるという信じられない現象を経験する。またその現象はまやかしだと信じたい汪に対し科学フロンティアの申は宇宙背景放射を観察してみろと言う。その結果汪は今自分に起こっていることはまやかしではない。人類が築いてきた物理学は根底から覆されていると感じる。
それと同時に汪は申がプレイしていたVRゲーム「三体」にログインする。その世界には太陽が3つあり気候が安定しない。灼熱と極寒を繰り返す世界の中で「三体」の中のキャラクターたちは「三体」文明を発達させるべく努力するが世界は常に崩壊する。なぜならば3つの太陽の動きを理解する数学的な解はなく対処方法がないからだ。
この妙にリアルな「三体」は何のためのゲームなのか?そして汪に起こっている奇妙な現象の意味は?文化大革命から始まる数奇な運命を生きてきた科学者葉文潔と科学フロンティアとの関わりが明らかになった時、すべては一つにつながり恐ろしい現実を汪は目の当たりにすることになる。
こんな面白いSF作品は久しぶりです。高い評価をされている皆様の書評で興味を持ち読んで良かったです。着想のオリジナリティの素晴らしさもさることながら名作SFを彷彿させるような雰囲気や数学・物理学の歴史を織り込んだ正にSFファンに留まらない幅広い読者を獲得できるエンターテイメントだと思います。
本書の訳者でありSF翻訳で有名な大森望さんが様々な名作SFの名を出して解説しており、汪を襲うカウントダウンについて「リング」のようなサスペンスと書かれていますが、私は本書全体の雰囲気として同じ鈴木光司さんの「エッジ」の雰囲気に似ていると思います。
また、天体物理学的な部分については「星を継ぐもの」のワクワク感について言及されていますが全く同感です。VRゲームの部分についてはイーガンの「ゼンデギ」を思い出します。ファーストコンタクトという面では過去の数々の名作を合わせたようという評は的を射ていると思います。
本書は物理学や数学等の知識がなくてももちろん問題はないのですが、あれば更に面白さが増すと思います。「三体問題」や「宇宙背景放射」を始めとして極めつけは一般相対性理論と量子力学の矛盾を解消するかもしれない超ひも理論の、理論が正しければ宇宙は最大11次元ということを利用した「智子(ソフォン)、智恵を持った陽子」というアイデアです。たとえこの理論が正しかったとしても人間には4次元以上の次元をイメージすることは不可能です。それをSF的説明に果敢に挑戦する作者に敬意を表したいと思います。
私は智子という従姉がいるのでどうしても智子(ともこ)と呼んでしまいます。
その他にも直接プロットには関わりがなくてもVRゲームの中でガリレオ、アリストテレス、コペルニクス、ダ・ヴィンチなどが天体についての議論をするところやニュートンとライプニッツの微分発見論争など知っているとかなり楽しく読めると思います。
またこの作品には哲学の側面も盛り込まれているように思います。一つの神を崇める宗教においてなぜ無数の宗派ができてしまうのか、その原因の一つは神が誰にでも認識できコミュニケーションできるというレベルで実在しないということがあると思います。それにより神の意思の解釈がいくらでもできるのでしょう。しかし、この物語の神は実在し意思も明確です。それにも関わらず3つの派ができる。ということは人間にとって神の存在はあってもなくても同じで結局は権力闘争に利用しているだけと言えるかもしれません。
「三体」は3部作の1作目ということであり早く続きが読みたいです。
ナノマテリアルの研究者である汪淼は怪しい科学団体「科学フロンティア」へ潜入する中で、自分の視野にカウントダウンしている数字があるという信じられない現象を経験する。またその現象はまやかしだと信じたい汪に対し科学フロンティアの申は宇宙背景放射を観察してみろと言う。その結果汪は今自分に起こっていることはまやかしではない。人類が築いてきた物理学は根底から覆されていると感じる。
それと同時に汪は申がプレイしていたVRゲーム「三体」にログインする。その世界には太陽が3つあり気候が安定しない。灼熱と極寒を繰り返す世界の中で「三体」の中のキャラクターたちは「三体」文明を発達させるべく努力するが世界は常に崩壊する。なぜならば3つの太陽の動きを理解する数学的な解はなく対処方法がないからだ。
この妙にリアルな「三体」は何のためのゲームなのか?そして汪に起こっている奇妙な現象の意味は?文化大革命から始まる数奇な運命を生きてきた科学者葉文潔と科学フロンティアとの関わりが明らかになった時、すべては一つにつながり恐ろしい現実を汪は目の当たりにすることになる。
こんな面白いSF作品は久しぶりです。高い評価をされている皆様の書評で興味を持ち読んで良かったです。着想のオリジナリティの素晴らしさもさることながら名作SFを彷彿させるような雰囲気や数学・物理学の歴史を織り込んだ正にSFファンに留まらない幅広い読者を獲得できるエンターテイメントだと思います。
本書の訳者でありSF翻訳で有名な大森望さんが様々な名作SFの名を出して解説しており、汪を襲うカウントダウンについて「リング」のようなサスペンスと書かれていますが、私は本書全体の雰囲気として同じ鈴木光司さんの「エッジ」の雰囲気に似ていると思います。
また、天体物理学的な部分については「星を継ぐもの」のワクワク感について言及されていますが全く同感です。VRゲームの部分についてはイーガンの「ゼンデギ」を思い出します。ファーストコンタクトという面では過去の数々の名作を合わせたようという評は的を射ていると思います。
本書は物理学や数学等の知識がなくてももちろん問題はないのですが、あれば更に面白さが増すと思います。「三体問題」や「宇宙背景放射」を始めとして極めつけは一般相対性理論と量子力学の矛盾を解消するかもしれない超ひも理論の、理論が正しければ宇宙は最大11次元ということを利用した「智子(ソフォン)、智恵を持った陽子」というアイデアです。たとえこの理論が正しかったとしても人間には4次元以上の次元をイメージすることは不可能です。それをSF的説明に果敢に挑戦する作者に敬意を表したいと思います。
私は智子という従姉がいるのでどうしても智子(ともこ)と呼んでしまいます。
その他にも直接プロットには関わりがなくてもVRゲームの中でガリレオ、アリストテレス、コペルニクス、ダ・ヴィンチなどが天体についての議論をするところやニュートンとライプニッツの微分発見論争など知っているとかなり楽しく読めると思います。
またこの作品には哲学の側面も盛り込まれているように思います。一つの神を崇める宗教においてなぜ無数の宗派ができてしまうのか、その原因の一つは神が誰にでも認識できコミュニケーションできるというレベルで実在しないということがあると思います。それにより神の意思の解釈がいくらでもできるのでしょう。しかし、この物語の神は実在し意思も明確です。それにも関わらず3つの派ができる。ということは人間にとって神の存在はあってもなくても同じで結局は権力闘争に利用しているだけと言えるかもしれません。
「三体」は3部作の1作目ということであり早く続きが読みたいです。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:448
- ISBN:9784152098702
- 発売日:2019年07月04日
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