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たけぞう
レビュアー:
書簡の中であふれる言葉の海に酔う。
いやー、難しかったです。正直に言ってわたしの手には負えませんでした。
先行書評の「ぱせりさんの書評」が素晴らしいので推薦しますね。

さてさて、読みこなせなかった庶民の感想をまとめます。
文章を追ってもどんどん抜けていく感覚は、
山尾悠子さんの作品でも味わっています。
比喩が掴みづらいことと、気を抜くと文章表現の前後関係が分からなくなり、
何の話だったのか迷子になるパターンです。

幻想的な要素が多いのかもしれません。
そういう世界観が好きな人は、きっと捉えられるでしょう。
特に堀江敏幸さんの文章に幻惑されました。
小川洋子さんの文章にも似た感じを受けますが、他の作品に親しんでいるので
著者のスタイルからは外れています。あくまでも相手に合わせて
世界観を壊さないように慎重に注意を払っている感じがします。
むしろ、こんな難しい世界についていける小川洋子さんの奥深さに感服します。

この作品は、小川洋子さんと堀江敏幸さんが往復書簡の形式で書いた小説です。
小川さんが妻らしき人の役、堀江さんが夫らしき人の役です。
らしきと書くぐらい、物事の事実関係の描写がありません。
どんな状況になているのか、もやーんとしたままで
雰囲気重視のお話が進んでいく感じです。
昨日、大きな決断を一つしました。
まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです。
目覚めている間も、眠っている時と変わらず、ずっと、です。
一通目の手紙は小川洋子さんの手によって書かれています。
ひょっとしたら物語の着地点を決めずに、お互いにネタ振りをするみたいに
書いていったのかもしれません。
結局、一行目のこの超ド級の設定が、物語を通じて効いていますので。

二通目の手紙は堀江敏幸さん。
手作りの切手を、本物の切手の下に貼って出したことから書き始めています。
切手の手作りに使う道具のはさみやタイプライターについての描写が、
あっちに飛び、こっちに突っこみ、のたうち回るように書かれています。
どうやら男の方は視力を失っていることに話が飛び火し、
一通目の手紙とのつながりを連想させます。
しかし、この設定も二転三転していくのです。

二人の間に何があったのだろう。

読み手がそんな思いを抱えたまま、小説は最後まで進み、
答えは分からないまま終わります。
もしくは、わたしが捉えきれていないだけなのかもしれません。
夢か幻か、混沌とした気持ちになる作品です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1465 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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この書評へのコメント

  1. ぱせり2019-10-10 21:43

    たけぞうさん、ありがとうございます。わたしも、わからないです。わからないけど(わからないまま)この雰囲気、好きですー。
    ほんとに、どうやって書いていったんだろう、と考えてしまいます。

  2. たけぞう2019-10-11 22:23

    >ぱせりさん
    分からないなんて、そんな。わたしからしたら、ぱせりさんは充分読みこなしていると思いましたもん。

  3. No Image

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