薄荷さん
レビュアー:
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仕事場で「悪い人じゃないんだけど…」って言われてる人は、間違いなく「イラッとさせる面倒くさい人」。
ぽんきちさん主催の「夏だ! 「新潮文庫の100冊2019」にチャレンジ!」参加書評です。
本書は、4つの短編からなる「職場の作法」+「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」までが同じOL目線の連作短編集で、表題作「とにかくうちに帰ります」のみ別の登場人物で構成されています。
沸き起こる共感とニヤつきが抑えられなかったのが「職場の作法」。
穏やかではない題名の4つの短編それぞれには、絶対どこの職場にもいる「イラッとさせる奴ら」が登場します。
奴らに邪魔されながら仕事をこなしていく語り手・鳥飼早智子と、ともに働く事務職女子仲間(田上さん&浄之内さん)の職場における「戦い」の・・・じゃなかった「作法」の物語です。
1 ブラックボックス
無理な仕事をお願いすべきところを、事務職の女子を軽んじて横柄な態度で雑すぎる指示をし、甘えた丸投げをかまし、後から理不尽なことを言ってくる輩(やから)。
VS
彼らが冷や汗を滲ませ胃痛をおこすほどスリリングな時間=指定してきた期限ギリギリに仕事を仕上げることで、静かな反撃をかましつつ自分の仕事をブランディングする田上さん。
2 ハラスメント、ネグレクト
職場でおきる小さな問題を、さりげなく解決してくれる優しい穏やかな浄之内さん。
VS
「浄之内さんの従妹の美人議員メディア情報」を誰彼かまわずしつこく話続け、流れで自分の家柄&金持ち自慢をしたくて堪らないから、人の話を全然聞かず相手の迷惑顧みない北脇部長。
3 ブラックホール
悪気なく他人の机の上にある文具を勝手に使い、無意識に外出先や家に持ち帰ったり、片付けの際に大きな引き出しにつっこんで忘れちゃう間宮さん。(ブンボウガーの敵!)
VS
辛い失業時代を乗り越え、ようやくこの会社に就職した自分へのご褒美として購入し、大切に使っていたペリカーノジュニア(ペリカン社の子供用万年筆)を、間宮さんが失くしたという疑念を抱く鳥飼さん。
4 小規模なパンデミック
インフルエンザ大流行中「体調が悪いのに会社に来て頑張ってるオレ」アピールをしまくる営業の山崎くん。(アピールのために咳をしながら社内徘徊しているが、マスクもしなけりゃ手の消毒をする気配も無い)
VS
ダントツでインフル脱却した鳥飼さんと、自転車通勤の浄之内さん以外、おそらく山崎アピールでばら撒かれたインフルエンザの餌食となって休む羽目になった社員一同。
奴らの精神攻撃をかわしつつ仕事をこなす女子事務員たちの一員である、鳥飼女史は作中でこう語っています。
奴らは悪気があるわけではなく、ただ単に人間性が絶望的に鈍いだけなのかもしれません。でもさぁ・・・やっぱりクソ忙しいときには、「ふざけるな!地獄の犬に喰われちまえ!」って思っちゃいますよねぇ(笑)。
表題作「とにかくうちに帰ります」もまた、天候や事故で交通機関が麻痺し、通勤通学で酷い目に合ったことがある人には、たまらなくツボにはまると思います。
舞台は豪雨におそわれた埋立州で、唯一の交通手段・循環バスは運休、本土まで歩いて30分の橋は事故で通行止め。
それでも「とにかくうちに帰り」たい」理由を持った4人=塾帰りの小学生&バツイチ係長・備品管理係OL&あまり接点のない1年後輩の営業男子の2組が豪雨の中、歩いて帰宅を目指す物語。
・・・ってだけの話なんだけど、『豪雨の中電車とバスの運休&橋の通行止め』という事実が繰り出してくるボディブロー的絶望感が、ものすごくリアル!
絶望しながら歩く豪雨の中、凹みがちな気分を引き上げてくれる相棒とか、この特異な状況でちょっとだけ接点を持った人の親切とか、普通の人の普通の助け合いが、なんだか優しい気分にしてくれつつ、
ああホントに、普通に家に帰ってこうやって普通にPCに向えているって幸せ!って思えるお話です。
うすい本ですぐに読めちゃいますが、かなり濃ゆくお楽しみいただける地味な(笑)エンタテイメントストーリーをお楽しみください。
本書は、4つの短編からなる「職場の作法」+「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」までが同じOL目線の連作短編集で、表題作「とにかくうちに帰ります」のみ別の登場人物で構成されています。
沸き起こる共感とニヤつきが抑えられなかったのが「職場の作法」。
穏やかではない題名の4つの短編それぞれには、絶対どこの職場にもいる「イラッとさせる奴ら」が登場します。
奴らに邪魔されながら仕事をこなしていく語り手・鳥飼早智子と、ともに働く事務職女子仲間(田上さん&浄之内さん)の職場における「戦い」の・・・じゃなかった「作法」の物語です。
1 ブラックボックス
無理な仕事をお願いすべきところを、事務職の女子を軽んじて横柄な態度で雑すぎる指示をし、甘えた丸投げをかまし、後から理不尽なことを言ってくる輩(やから)。
VS
彼らが冷や汗を滲ませ胃痛をおこすほどスリリングな時間=指定してきた期限ギリギリに仕事を仕上げることで、静かな反撃をかましつつ自分の仕事をブランディングする田上さん。
2 ハラスメント、ネグレクト
職場でおきる小さな問題を、さりげなく解決してくれる優しい穏やかな浄之内さん。
VS
「浄之内さんの従妹の美人議員メディア情報」を誰彼かまわずしつこく話続け、流れで自分の家柄&金持ち自慢をしたくて堪らないから、人の話を全然聞かず相手の迷惑顧みない北脇部長。
3 ブラックホール
悪気なく他人の机の上にある文具を勝手に使い、無意識に外出先や家に持ち帰ったり、片付けの際に大きな引き出しにつっこんで忘れちゃう間宮さん。(ブンボウガーの敵!)
VS
辛い失業時代を乗り越え、ようやくこの会社に就職した自分へのご褒美として購入し、大切に使っていたペリカーノジュニア(ペリカン社の子供用万年筆)を、間宮さんが失くしたという疑念を抱く鳥飼さん。
4 小規模なパンデミック
インフルエンザ大流行中「体調が悪いのに会社に来て頑張ってるオレ」アピールをしまくる営業の山崎くん。(アピールのために咳をしながら社内徘徊しているが、マスクもしなけりゃ手の消毒をする気配も無い)
VS
ダントツでインフル脱却した鳥飼さんと、自転車通勤の浄之内さん以外、おそらく山崎アピールでばら撒かれたインフルエンザの餌食となって休む羽目になった社員一同。
奴らの精神攻撃をかわしつつ仕事をこなす女子事務員たちの一員である、鳥飼女史は作中でこう語っています。
つくづく誰もが普通の人で、悪くもなりきれないし冷徹にもなりきれない。面白くないけど、良くないことでもないのかもしれない。
奴らは悪気があるわけではなく、ただ単に人間性が絶望的に鈍いだけなのかもしれません。でもさぁ・・・やっぱりクソ忙しいときには、「ふざけるな!地獄の犬に喰われちまえ!」って思っちゃいますよねぇ(笑)。
表題作「とにかくうちに帰ります」もまた、天候や事故で交通機関が麻痺し、通勤通学で酷い目に合ったことがある人には、たまらなくツボにはまると思います。
舞台は豪雨におそわれた埋立州で、唯一の交通手段・循環バスは運休、本土まで歩いて30分の橋は事故で通行止め。
それでも「とにかくうちに帰り」たい」理由を持った4人=塾帰りの小学生&バツイチ係長・備品管理係OL&あまり接点のない1年後輩の営業男子の2組が豪雨の中、歩いて帰宅を目指す物語。
・・・ってだけの話なんだけど、『豪雨の中電車とバスの運休&橋の通行止め』という事実が繰り出してくるボディブロー的絶望感が、ものすごくリアル!
絶望しながら歩く豪雨の中、凹みがちな気分を引き上げてくれる相棒とか、この特異な状況でちょっとだけ接点を持った人の親切とか、普通の人の普通の助け合いが、なんだか優しい気分にしてくれつつ、
ああホントに、普通に家に帰ってこうやって普通にPCに向えているって幸せ!って思えるお話です。
うすい本ですぐに読めちゃいますが、かなり濃ゆくお楽しみいただける地味な(笑)エンタテイメントストーリーをお楽しみください。
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スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
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- 出版社:新潮社
- ページ数:208
- ISBN:9784101201412
- 発売日:2015年09月27日
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