書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

DBさん
DB
レビュアー:
ミイラに魅せられた学者の本
ミイラ会議なるものをご存知でしょうか。
南米チリの小さな港町アリカで開催される学術シンポジウムです。
サイエンスライターの筆者が会議に参加するシーンから始まります。
そこに集うのは、世界中のミイラに魅了された学者たち。
ミイラを文化や歴史の面から研究する人もいれば、寄生虫や髪の毛の分析で病気の手がかりを得ようとする人もいる。
そんな濃すぎるミイラ学者と、彼らが研究しているミイラについて書かれているのが本著です。

まずは表紙から、八体のミイラが部屋の隅に佇んでいるかのように置かれているインパクトある写真です。
そして本を開くとアリカの隣にあるアタカマ砂漠で発見されたミイラの顔面のアップが目に飛び込んでくる。
ページをめくればミイラの睫毛まで揃っていることがわかる目の部分のアップ。
このような保存状態のいいミイラの写真を見ると、ミイラ会議の参加者のあいだには深い感動が走るそうです。

さらに研究者が気に入ったからと解体せずにとっておいたミイラの頭部が二つ並んでいる写真。
頭髪を整えたミイラの写真と、真っ白い頭蓋骨に毛髪が乗っている写真が対比するかのように並んでいるページもあり。
ヨーロッパではボッグマンといって、沼地に沈み嫌気的な状態になったせいで灰色のなめし革のようになった死体が保存されることがあるそうです。
絞殺されて沼に投棄されたと思われる少女のボッグマンの写真も、押しつぶされたかのような顔が苦悶の表情を浮かべているように見える。
インカの山に捧げられた子供のミイラ、聖遺物としてガラスケースに入れられた聖人の遺骸、粘土で覆われたチンチョーロミイラと続いていきます。

最初写真だけ見たときは、そのリアルさに食事中に読むのをやめたほどでしたが。
それぞれを詳しく解説した本文を読みすすめていくにつれて、写真に戻ってじっと見入ってしまうほど面白かった。
絵の具にされてしまったミイラはともかく、薬として利用していたなんてありえないけどね。

日本のミイラも紹介されています。
奥州藤原氏のミイラは有名ですが、この本では即身仏について触れられていた。
死体を保存する原理として、バチカンで列聖される人の遺体をミイラ化する話が出てくる。
やはりミイラとなるのは特別な存在であり、死後も人心を集めるためにミイラとして保存する。
そんな例としてスターリンも出てきます。
歴史としては興味深いけれど、やはり焼いて灰となるのがいいと思うのは日本人だからでしょうか。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
DB
DB さん本が好き!1級(書評数:1999 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

読んで楽しい:6票
参考になる:23票
共感した:1票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ミイラはなぜ魅力的か―最前線の研究者たちが明かす人間の本質』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ