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休蔵さん
休蔵
レビュアー:
明治から昭和にかけて建てられた洋館を、直木賞作家である門井慶喜が解説。ワイドな写真を眺めるだけでもワクワクする仕上がりだ。
 日本各地に近代の洋館が残されている。
 日本家屋とはまったく異なる存在感を示しながら、その多くは街に溶け込んでいる。
 もちろん、街から隔絶されて遺る事例もあるが、それでもその存在感には目を見張るものがある。
 日本にいて洋館を目にすることは、やはりどこか違和感を覚えるものなのだ。
 その違和感が存在感となって、見るものに強いインパクトを与えている。
 もちろんいい意味でのインパクトだ。
 本書はそんなインパクトたっぷりの洋館のうち特一級品30件を紹介する。
 紹介文は直木賞作家の門井慶喜というから、二度おいしい。

 さて、本書に登場する30の物件は、いずれも超一級品である。
 その筆頭は「迎賓館 赤坂離宮」で間違いあるまい。
 大正天皇が皇太子時代にお住まいとして建てられた東宮御所。
 庶民からすると、この建物に住まうなど、想像だにできないが、もちろん単なる住まいで終わるわけがない。
 最初から国家の社交場としての役割も担わされていたとか。
 まあ、そんなことはともかく、圧倒的なインパクトを持つ建物であることは間違いない。

 建物というものは、それを所有し、維持管理する人がいてはじめて成り立つ存在だ。
 もちろん、自然災害などで失われてしまうこともあるが、平常時にも管理は不可欠。
 兵庫県の「旧グッゲンハイム邸」は取り壊しの憂き目にあうところだったとか。
 阪神・淡路大震災、度重なる台風の襲来により、取り壊しも検討されていたが、そこに所有者の森本アリさんが「もったいない」と購入を決意。
 自由に改装をしながら、しっかりとした継承者になっているようだ。
 歴史的背景をしっかりと持った建物を購入する機会など、そうそう訪れることはない。
 しかし、そういう機会が目の前に転がってきても、それを実行に移すことは相当な困難が伴う。
 困難をものともしない強者がいることで、歴史的建造物が次代へと継承されていくことになったと言えよう。

 本書には明治、大正、昭和と30の物件が登場するが、外観のみを含めてみたことがある物件はわずか8に過ぎなかった。
 中にお邪魔したことがある物件はさらに半減する。
 なんとつまらぬ人生を送ってきたことか!
 もちろん、登場する物件が旅先にしかないことも原因ではなる。
 居住地にあれば、きっと訪問していたはずなのに、と悔しい気持ちも湧いてくるが、近隣に住むと意外に足は遠のいてしまうもの。
 旅行の目的として存在してくれたほうが、案外訪問は実現するのかもしれない。
 そんな負け惜しみを思いつつ、次に訪れる物件を模索しながらページを繰るのであった。
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:449 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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この書評へのコメント

  1. Yasuhiro2019-07-15 08:09

    おはようございます。神戸近辺は洋館が多く残っているので、是非訪れてください。グッゲンハイム邸はちょっと不便なところにあるのですが、いい雰囲気ですよ。時々コンサートなんかがあって出かけます。原田知世さんもされたことがあります(^^)。

  2. 休蔵2019-07-15 08:35

    おはようございます。神戸は洋館のイメージが強いですよね。全てを行けているわけではないですし、グッゲンハイム邸も未踏査!コンサートも楽しめるなんて、いいですね。ぜひとも行ってみたいです。情報、ありがとうございます!!

  3. No Image

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