かもめ通信さん
レビュアー:
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読み手を派生読書に誘う好奇心への刺激がたっぷり、ユーモアもあり、本と図書館への愛情もあってと、本好きに愛される要素が沢山盛り込まれたなかなか贅沢な作品だった。
物語の語り手は、小説を書きながらフリーライター業で生計を立てている〈わたし〉。
当時三十代半ばだった〈わたし〉は、仕事で上野の国際子ども図書館を訪れた帰り、たまたま公園のベンチで隣に座った女性と言葉を交わす。
白髪頭でちょっと変わった服装をした六十代くらいの喜和子という名のその女性は、自分はかつて図書館に「半分住んでいたみたいなもの」だったという。
二度目に会った時、喜和子さんは〈わたし〉に、上野の図書館の小説を書かないか、と持ち掛ける。
タイトルは『夢見る帝国図書館』。
唐突に思えたその提案の裏に、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだった」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密が横たわっていることを、そのとき〈わたし〉はまだ知らなかった。
もし、図書館に心があったなら――足繁く通ってきた樋口一葉に恋をしたかもしれない。
もし、図書館に心があったなら――あの田舎から出てきた詩人宮澤賢治のことをどう思っていただろうか。
後年、永井荷風の父となる永井久一郎をはじめ、資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たちの悪戦苦闘。
関東大震災、そして戦争……。
通いくる人々と移りゆく世の中を図書館はどのように見つめてきたのか。
物語はそうした図書館をめぐるエピソードを綴る一方で、敗戦直後の上野で子ども時代を過ごし
先行レビューに惹かれて手にした1冊。
とりわけ図書館を生み育ててきた人々と図書館に足繁く通っていた人々のエピソードを盛り込んだ図書館を主役にしたパートを面白く読んだのだが、どこかで読んだことがある話も次々と出てきて、これは確か……あれはなんだったっけ?この作品も読んでおくべき?と派生読書欲が次々と……。
読み手を派生読書に誘う好奇心への刺激がたっぷり、ユーモアもあり、本と図書館への愛情もあってと、本好きに愛される要素が沢山盛り込まれたなかなか贅沢な作品だった。
当時三十代半ばだった〈わたし〉は、仕事で上野の国際子ども図書館を訪れた帰り、たまたま公園のベンチで隣に座った女性と言葉を交わす。
白髪頭でちょっと変わった服装をした六十代くらいの喜和子という名のその女性は、自分はかつて図書館に「半分住んでいたみたいなもの」だったという。
図書館が主人公の小説を書いてみるっていうのはどう?
二度目に会った時、喜和子さんは〈わたし〉に、上野の図書館の小説を書かないか、と持ち掛ける。
タイトルは『夢見る帝国図書館』。
あたしが書こうかなって思ってたんだけど、考えてみたら、あたし、文章書いたことないし、試しにやってみたらまったくできそうもない気がしてきたんだよね
唐突に思えたその提案の裏に、敗戦直後に上野で子供時代を過ごし「図書館に住んでるみたいなもんだった」と言う喜和子さんの人生に隠された秘密が横たわっていることを、そのとき〈わたし〉はまだ知らなかった。
もし、図書館に心があったなら――足繁く通ってきた樋口一葉に恋をしたかもしれない。
もし、図書館に心があったなら――あの田舎から出てきた詩人宮澤賢治のことをどう思っていただろうか。
後年、永井荷風の父となる永井久一郎をはじめ、資金難に悩まされながら必至に蔵書を増やし守ろうとする司書たちの悪戦苦闘。
関東大震災、そして戦争……。
通いくる人々と移りゆく世の中を図書館はどのように見つめてきたのか。
物語はそうした図書館をめぐるエピソードを綴る一方で、敗戦直後の上野で子ども時代を過ごし
図書館に住んでるみたいなもんだったと言う喜和子さんの人生に隠された秘密をも、たどってゆくことになる。
先行レビューに惹かれて手にした1冊。
とりわけ図書館を生み育ててきた人々と図書館に足繁く通っていた人々のエピソードを盛り込んだ図書館を主役にしたパートを面白く読んだのだが、どこかで読んだことがある話も次々と出てきて、これは確か……あれはなんだったっけ?この作品も読んでおくべき?と派生読書欲が次々と……。
読み手を派生読書に誘う好奇心への刺激がたっぷり、ユーモアもあり、本と図書館への愛情もあってと、本好きに愛される要素が沢山盛り込まれたなかなか贅沢な作品だった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:404
- ISBN:9784163910208
- 発売日:2019年05月15日
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