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かもめ通信
レビュアー:
「これを書いているのだから、僕がまだ死んでいないことは明らかだろう。だが、君がこれを読むころにはもう死んでいるかもしれない。」作中でそう語った作家の死後に出版された短編集。
ホンヤクモノスキーを自認する私だが
つい最近までいわゆる「アメリカ文学」には
ほとんど手を伸ばしてこなかった。

アルコールとドラッグとセックスと暴力……といった
退廃的なイメージに抵抗を感じてしまうのだ。

実をいうと同じ白水社のエクスリブリスから出ている
デニス・ジョンソンの第一短編集『ジーザス・サン』も
そうした理由から途中で挫折した1冊だったりする。

この本も翻訳が藤井光さんだからという理由で
手に取ってみたものの
無理なようなら途中でやめようと
最初からあきらめムードで読み始めたのだが
これが思いの外良かった。

・海の乙女の惜しみなさ
・アイダホのスターライト
・首絞めボブ
・墓に対する勝利
・ドッペルゲンガー、ポルターガイスト

収録されているのはこの5つの作品。

登場人物達はあいかわらずアルコール中毒だったり、
刑務所暮らしだったり、
孤独だったり、あれこれ見失っていたりと
いろいろな意味で死にかけているのだが、
当初懸念していたような
主人公も作者も一緒になってドクドクと血を流しながら
地べたでのたうち回ったあげく、
読み手の心臓めざして切りつけてくる……といった
過激な荒々しさはなく
むしろ非常に渇いた印象を受ける。

口の中の水分を全部もっていかれてしまうような渇きの中で
「やるせなさ」や「憤り」や「老い」や「死」について考える。

好きだとは言えない。
けれども忘れがたく、読んで良かったと思える1冊だった。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2228 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2019-06-21 06:00

    只今掲示板にて
    <祝 #白水社 #エクスリブリス #創刊10周年 記念読書会> 
    を開催中。
    今回は10/5までとのんびりやっていますので、ぜひ遊びに来てください。
    https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no358/index.html?latest=20

  2. 青玉楼主人2019-06-21 09:53

    そうだったんですね。知りませんでした。
    「アルコールとドラッグとセックスと暴力」
    まさにその通り、ですが「思いの外良かった」
    と思ってもらえてよかった。
    アメリカ文学好きとしてはうれしい限りです。

  3. かもめ通信2019-06-21 13:44

    実はそうだったのです。
    先日もあんなに沢山ある柴田元幸さんの訳本を片手で数えられるほどしか読んでいないことに気づいて愕然としました……。(汗)

  4. 青玉楼主人2019-06-21 20:51

    柴田元幸さんには、ずいぶんお世話になっています。
    大好きなミルハウザーもダイベックも氏を通じて知りました。
    好きな訳者が見つかると、読む本の範囲がぐっと広がりますよね。

  5. かもめ通信2019-06-22 06:41

    訳者の魅力で世界が広がる!ということは確かにありますね。
    私も藤井光さんのおかげでどんどん広がっていますw

  6. No Image

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