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darklyさん
darkly
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セミは単なる虐げられたサラリーマンなのだろうか?読むだけなら数分の作品ながらいつまでも絵を眺めながら色々と考えてしまう。
私はあまり絵本を読まないのですがこのジャケットに惹かれました。表紙も含めほとんどのページが灰色を基調とした暗い色彩の絵ばかりです。しかし一ページ毎にしばらくじっと眺めるほどどのページもなんとも印象深い。

会社でデータ入力の仕事をしているセミは真面目にコツコツと働くが、ニンゲンでないのが理由で不当な扱いを受けている。出世もしない。トイレは使わせてもらえない。ニンゲンの残した仕事を一人残業しても感謝もされない。同僚に虐められる毎日。そして17年後に定年を迎える。そして仕事も家もお金もないセミは会社の屋上に上がり隅に立つ。

物語は意外といえば意外、当たり前と言えば当たり前の展開で終わりますが、最後のたった9文字の文章が何とも言えない読後感と混乱をもたらせます。

単純に読めば会社における価値観に囚われ、会社での世界がすべてであったサラリーマンが退職後の新たな人生の中でそのことの愚かさを自覚する物語と思われますが、最後の一文によってもしかするともっと大きな話の可能性もあるのではないかと思わされます。

それは人間社会とりわけ会社というものは、人間も含む自然に反しているのではないか。会社の価値観に囚われている会社員と同様、自然界の中で自分たちが支配者だと勘違いしている人間を愚かだと自然は逆にバカにしているのではないか。まあ深読みしすぎかもしれませんが。

またこの絵本を眺めていて私は映画の「マトリックス」と似ているかもしれないと思いました。それは無機質なビル群、無数の仕切りの中で仕事をするセミなどの絵がマトリックスの世界のようで、人は仮想の中で生きていることを自覚していない。セミはそこから飛び立ち真実を知るという構図。これも全く私の妄想ですが。

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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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