三太郎さん
レビュアー:
▼
変身譚といってもよい作品だった。
お正月から19世紀に英国の詩人・劇作家が書いた有名な長編小説を読み始めたのだが、これが退屈でなかなか読み進まない。半分読んだところで一旦お休みして手に取ったのがこの短編小説「異類婚姻譚」だった。作者の本谷氏は劇作家が本業だったらしいのだが、こちらはすらすら読める。(それに夫婦の姿が互いに似てくるというのは身に覚えのある話だ。)
タイトルの異類婚姻譚というのは、動物が人間と結婚して、結局破綻するという物語の総称だという。結婚生活がテーマみたいだ。
主人公の女性は30代で初婚、夫は離婚経験ありで、高給取りで、持ち家(マンション)ありで、子供なし。主人公はこれ幸いと仕事をやめて専業主婦になった。まだ結婚して数年であるが、ある日夫の顔と自分の顔がどことなく似てきたことに気が付いた。夫の顔を注意して見ていると目鼻の位置が本来の位置と微妙にずれることがあった。
このお話は主人公のご近所の老夫婦や同棲中の弟のカップルの話を織り込みながら、結婚生活の機微について描いていくのであるが、主人公の夫が仕事に行けなくなり、家に引きこもって、ついには山シャクヤクに変身するところで終わる。人間生活に疲れはてた夫が人間から植物に変身するお話だった。だからタイトルは「変身譚」でもよかったのかも。
人が植物に変身する話というと、どうしても安部公房のデンドロカカリアを連想してしまう。公房の小説の主人公コモン君は顔が裏返って植物に変身してしまうのだが、まず容貌から変わる点も似ている。
でも本谷氏の小説は変身譚ではなくて異類婚姻譚だという。異類というのは「男」と「女」のことなんだろうか。
この小説のラストでは、主人公の女は山に植えた元夫の山シャクヤクが隣に生えていたリンドウと仲睦まじく花を咲かせているのを見て、寒気を覚えて、逃げるように山を下りていく。異種の婚姻というのは山シャクヤクとリンドウの婚姻のことだったのかも。植物は種が異なっても、菌根菌などを介して根が互いにつながって養分をやり取りし共生しているのだという。
男と女もよりよい共生関係ができるとよいのですがねえ。
                         
タイトルの異類婚姻譚というのは、動物が人間と結婚して、結局破綻するという物語の総称だという。結婚生活がテーマみたいだ。
主人公の女性は30代で初婚、夫は離婚経験ありで、高給取りで、持ち家(マンション)ありで、子供なし。主人公はこれ幸いと仕事をやめて専業主婦になった。まだ結婚して数年であるが、ある日夫の顔と自分の顔がどことなく似てきたことに気が付いた。夫の顔を注意して見ていると目鼻の位置が本来の位置と微妙にずれることがあった。
このお話は主人公のご近所の老夫婦や同棲中の弟のカップルの話を織り込みながら、結婚生活の機微について描いていくのであるが、主人公の夫が仕事に行けなくなり、家に引きこもって、ついには山シャクヤクに変身するところで終わる。人間生活に疲れはてた夫が人間から植物に変身するお話だった。だからタイトルは「変身譚」でもよかったのかも。
人が植物に変身する話というと、どうしても安部公房のデンドロカカリアを連想してしまう。公房の小説の主人公コモン君は顔が裏返って植物に変身してしまうのだが、まず容貌から変わる点も似ている。
でも本谷氏の小説は変身譚ではなくて異類婚姻譚だという。異類というのは「男」と「女」のことなんだろうか。
この小説のラストでは、主人公の女は山に植えた元夫の山シャクヤクが隣に生えていたリンドウと仲睦まじく花を咲かせているのを見て、寒気を覚えて、逃げるように山を下りていく。異種の婚姻というのは山シャクヤクとリンドウの婚姻のことだったのかも。植物は種が異なっても、菌根菌などを介して根が互いにつながって養分をやり取りし共生しているのだという。
男と女もよりよい共生関係ができるとよいのですがねえ。
お気に入り度:





掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
この書評へのコメント
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:講談社
- ページ数:192
- ISBN:9784065132241
- 発売日:2018年10月16日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。




















