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ぽんきち
レビュアー:
数学の歴史を通じて、魅力と可能性を語る!
著者は数学者。専門は確率論だというが、著者を有名にしたのは、青少年や一般向けに数学の魅力を紹介する動画シリーズである。You Tubeの「Micmaths」という10分前後のシリーズで、図形を駆使しながら軽妙に語る。動画配信は150本を超え、チャンネル登録者数は32万人。数学の普及に努めた功績が認められ、著名な賞を受賞もしている。

本書では、数学1万年の歴史を語る。
特徴は、厳密にきっちり、数式たっぷりではなく、楽しい読み物としてまとめられている点だろう。数学が新しい扉を開いていくわくわく感が満載だ。
語り始めは古代。メソポタミアの土器に注目する。そのどこに数学があるかといえば、ほどこされる装飾性の幾何学模様である。「回転」や「対称」、「すべり鏡映」といった、いくつものパターンで模様が作り上げられている。
物を抽象的に「数」で表すようになったのもメソポタミアである。例えばヒツジを羊飼いに預けるとき、帰ってきたヒツジは減ってはいないのか? そうした場合にヒツジを「数える」必要が生まれる。やがて、「数」を表す「記号」が共有されるようになっていき、「数字」の誕生につながっていく。
幾何学は領地を分割するなどの必要性から大きく発展していく。多角形の基本である三角形は盛んに研究される。
幾何学が発展していくにつれ、定理や公理、証明に関心が寄せられる。
数に関しては、ゼロやマイナスの発見がポイントになる。さらには、円周率πに代表されるような、無限に小数点以下の数が続く無理数、同じもの同士を掛け合わせてマイナスになる虚数といった、直観では呑み込みにくい概念が導入され、そのたび大きな議論になった。

大きな発見の1つはデカルト座標である。平面に縦横2本の直線を引き、目盛りをつける。
これにより、幾何学と代数学の融合が可能になった。幾何の問題を方程式で解くことが可能になったわけである。直線は一次方程式、円は二次方程式、それぞれが交わる点も、計算によって迅速に求められる。

新しい形の数学が生まれるには、その都度、その概念を表すのに役立つ「言葉」や「記号」が必要になった。そうして新しい形の数学は、その都度、世界を違う切り口で示してみせた。

ロネーは言う。数学を楽しむには偉大な数学者になる必要はないと。それぞれの人が、それぞれの切り口で、それぞれに数や図形のおもしろさ・楽しさに気付けばよいと。
フィボナッチの数列。マンデルブロ集合の図形。
世界は数学的美しさに満ちている。あまりに広大無辺すぎて、どちらへ行ってよいか少々とまどうのだが、その道標としてはなかなか楽しい1冊である。


*余談としてちょっとおもしろいなと思ったのは、πを表す詩というやつでしてw フランス語でもあるようですが、最も有名なのはエドガー・アラン・ポーの『大鴉』をもじった"Near a Raven"(大鴉もどき)という英語のもの。
Poe, E.
Near a Raven
Midnights so dreary, tired and weary.
Silently pondering volumes extolling all by-now obsolete lore.
During my rather long nap - the weirdest tap!

・・・つまり何かっていうと、文字数で数字を表しているわけですね。Poe→3、E→1、Near→4、a→1、Raven→5となり、引用部分で3.141592653589793238462643383までです(^^;)。この調子で小数点以下740桁まであるそうです。すごい熱意ですねぇ・・・(ご興味のある方は、リンク先をどうぞw)。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1826 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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