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ぱせりさん
ぱせり
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過ぎていった日々に。
ほかに休憩所のないような国道沿いにあり、食事や休息の場を提供したドライブインは、戦後、一世を風靡したものの、その立ち位置をコンビニなどに譲り、徐々に消えて行った。今、この本を手にして、初めて、消えてしまったものに気がつく始末だ。そういえば、ドライブインを見なくなったって。
著者がドライブイン巡りをし、ドライブインについて書き始めたのは、2017年だそうだ。
「でも、まだ営業を続けている店が残っていて、(店主に)話を聞くことができ」た。
なぜドライブインを始めたのか、なぜその場所なのか、どんな時間を過ごしてきたのか……「そんな話を拾い集めれば、日本の戦後史のようなものに触れることができるのではないか」との思いからだ。


地域の民話と信仰とゆるやかに繋がる飴を作って売ってきた東海道掛川のドライブイン小泉屋。
筑豊炭田の閉山を傍らで見守っていたドライブインかわら。
トラック野郎にお風呂を提供した福島の二本松バイパスドライブイン。
お遍路さんの休憩所となった高知のドライブイン27。
……
日本全国を巡る22店のドライブインが紹介されている。


早朝から夜遅くまで、どの店も文字通り道路際のオアシスだったのだ。
店主たちは、過ぎた日々について、口をそろえるように、「あっという間だった」と語る。
この本を読みながら、感じる儚さは、それだからなのか。


群馬のドライブイン七輿を著者が訪れた時の話、心に残る。店を出ると、いつの間にか、ネオンが消灯していたという。
「コンビニエンスストアになくてオートレストランにあるのは、この暗さだ」と著者は書く。 
暗さは一概にマイナスなイメージではなかった。
それは、(私たちももちろん)徐々に老いていくことに感じる「不思議な落着き」と「侘しさ」だ。
その雰囲気は、ここだけではなくて、この本のなかのどのページにも広がっているように思う。
店主もお客も、懸命に生きてきた人たちで、その間には、信頼や情があった。
いくつものエピソードを読みながら、そういう「あっという間」だったのだなあと思っている。
懐かしくて、明るくて、温かくて、少し寂しい。
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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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