かもめ通信さん
レビュアー:
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起死回生を図る彼女たちの今後に、幸多かれと願わずにはいられない。
日野原翔子39歳。
アラフォー女性をターゲットにした雑誌「クワランタ」を中心に
記事を書いているフリーライターだ。
とびっきりとは言わないが、
かなりいい線をいっているはずの容姿に自信を持ち
常に異性の視線を意識してきた
自他共に認めるほど自意識過剰なところがある彼女には、
バリバリというほどではないが、
約15年、フリーランスで頑張って仕事をしてきたという自負もある。
女一人で組織に属さず仕事をする。
「気楽に好きなことが出来て良いね」と言われることも多いが、
続けるにはそれなりの能力が必要だし、
肩肘張って主張しなければいけない場面だって結構あり、
「こいつの前では涙は見せない」と、
奥歯を噛みしめた経験だって一度や二度ではない。
それでも、仕事も恋も謳歌してきたのだ。これまでは。
だがしかし、その両方で行き詰まりを感じ始めている。
ベテランのメリットよりも気楽さを選び
「若い子の方が、使いやすい」そうはっきりいう編集者もいる。
フリーランスでも既婚の場合はまた別だ。
不安定な職業のリスクを一人で負うことはないし、
いろいろな詮索やちょっかいをだされることもない。
そんなこんなで彼女は今、
40を前にして、
あれこれ掲げてきた理想を取り下げてでも
とにかく結婚しようとあせっているのだった。
そんな翔子の見合いシーンから始まり、
同じ女性誌の編集に携わる
コーディネイターの恵、カメラマンのルミ、スタイリストの友美という
“アラフォー・シングル・フリーランス”の4人の女性の物語は、
“こじれた不倫、見合いの失敗、昔の男の接近、
仕事のトラブル、親の介護、自分の健康”
など、気がつくと人生の崖っぷちに立っていた彼女たちの姿を描いている。
ジュリアナ東京のお立ち台をかろうじて知っている世代が
「ロシア」と聞いて思い浮かべるのが
ソルジェニーツィンの『収容所群島』とチェルノブイリということはないだろう。
いやまてよ、彼女は出版コーディネーターだ。
もしかして、一見そうは見えなくても文学オタクなのかもしれないなどと
あらぬ方向に期待をいだくもそういった期待は早々にあっさりと裏切られる。
そういう小ネタだけでなく
込み入りすぎた男女関係など、少々盛りすぎの感があって、
正直、詰めの甘さを感じる部分も少なくはないが、
全篇をつらぬくそういう抜けた感じが
ともすれば深刻になりがちなあれこれを軽いタッチで描き出すことに
一役買っていると言えなくもない。
「やりがい搾取」という言葉があるけれど、
本人たちがどれほど自覚しているかは別として、
仕事においてもプライベートにおいても
やる気も、才能も、若さやプライドさえも
周囲に搾取し続けられてきた彼女たちの
起死回生を図る今後に、幸多かれと願わずにはいられなかった。
アラフォー女性をターゲットにした雑誌「クワランタ」を中心に
記事を書いているフリーライターだ。
とびっきりとは言わないが、
かなりいい線をいっているはずの容姿に自信を持ち
常に異性の視線を意識してきた
自他共に認めるほど自意識過剰なところがある彼女には、
バリバリというほどではないが、
約15年、フリーランスで頑張って仕事をしてきたという自負もある。
女一人で組織に属さず仕事をする。
「気楽に好きなことが出来て良いね」と言われることも多いが、
続けるにはそれなりの能力が必要だし、
肩肘張って主張しなければいけない場面だって結構あり、
「こいつの前では涙は見せない」と、
奥歯を噛みしめた経験だって一度や二度ではない。
それでも、仕事も恋も謳歌してきたのだ。これまでは。
だがしかし、その両方で行き詰まりを感じ始めている。
ベテランのメリットよりも気楽さを選び
「若い子の方が、使いやすい」そうはっきりいう編集者もいる。
フリーランスでも既婚の場合はまた別だ。
不安定な職業のリスクを一人で負うことはないし、
いろいろな詮索やちょっかいをだされることもない。
そんなこんなで彼女は今、
40を前にして、
あれこれ掲げてきた理想を取り下げてでも
とにかく結婚しようとあせっているのだった。
そんな翔子の見合いシーンから始まり、
同じ女性誌の編集に携わる
コーディネイターの恵、カメラマンのルミ、スタイリストの友美という
“アラフォー・シングル・フリーランス”の4人の女性の物語は、
“こじれた不倫、見合いの失敗、昔の男の接近、
仕事のトラブル、親の介護、自分の健康”
など、気がつくと人生の崖っぷちに立っていた彼女たちの姿を描いている。
ジュリアナ東京のお立ち台をかろうじて知っている世代が
「ロシア」と聞いて思い浮かべるのが
ソルジェニーツィンの『収容所群島』とチェルノブイリということはないだろう。
いやまてよ、彼女は出版コーディネーターだ。
もしかして、一見そうは見えなくても文学オタクなのかもしれないなどと
あらぬ方向に期待をいだくもそういった期待は早々にあっさりと裏切られる。
そういう小ネタだけでなく
込み入りすぎた男女関係など、少々盛りすぎの感があって、
正直、詰めの甘さを感じる部分も少なくはないが、
全篇をつらぬくそういう抜けた感じが
ともすれば深刻になりがちなあれこれを軽いタッチで描き出すことに
一役買っていると言えなくもない。
「やりがい搾取」という言葉があるけれど、
本人たちがどれほど自覚しているかは別として、
仕事においてもプライベートにおいても
やる気も、才能も、若さやプライドさえも
周囲に搾取し続けられてきた彼女たちの
起死回生を図る今後に、幸多かれと願わずにはいられなかった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:小学館
- ページ数:445
- ISBN:9784093865371
- 発売日:2019年03月04日
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