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かもめ通信
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互いに全く異なる土地で、全く異なる境遇の元にくらす3人の女性たちの人生が、読者の目の前で交差し、編み上げられていく。
主人公は互いに全く異なる土地で全く異なる境遇の元にくらす3人の女性たち。

最初に登場するスミタは、夫と娘と共にインドで暮らしている。
最下層身分「不可触民」のカーストに属する彼女は
素手で他人の糞尿を拾い集めて処理する仕事を生業としているのだが、
自分が母親から引き継いだこの仕事を娘にだけはさせたくないと強く願っていて、
夫を説得し、娘を学校にやることにした。

二番目に登場するジュリアはイタリアのシチリア島で
家業である伝統的手工業の工房で働く若い独身女性だが、
ある日突然、父親が倒れたために、
工場の経営、家族のそして従業員たちの生活が
彼女の肩にのしかかることになる。

三番目に登場するサラはカナダに住む、三人の子のシングルマザー。
分刻みのスケジュールで敏腕弁護士として多忙な日々を過ごしていたが
精巧に築き上げてきたはずのキャリアの基盤が
ある出来事をきっかけにもろく崩れていく。

一巡したところで一番気になるのはやはりインドのスミタ。
あれこれ算段をして娘を学校にやったところで
娘はいったいどんな目にあってしまうのか……
まだ幼い娘が昔がプーラン人形を大切にしているくだりを読めば尚更
昔読んだ『女盗賊 プーラン』が思い出されて、
母子の行く末が心配でたまらなくなる。

だが二巡、三巡していくうちに
ジュリアやサラが直面するあれこれが
より身近なものとして感じられるようにもなってくる。

3人の主人公は、
それぞれの国でそれぞれの事情を抱え悩み苦しんでいるが
それぞれにそれと見えるつながりはなく、
互いを知らず、最後まで知らないままで物語は終わる。

けれども
社会が彼女たちにつきつける理不尽なあれこれに、
押しつぶされそうになりながらも
自らの力でそれに立ち向かっていく様が、
目に見えない形で繋がりあうことになる。

「髪」をモチーフにそれぞれの人生を交差させ、
編みあげていくストーリーは、
やがて読者をも巻き込んで、
より太く、よりたくましく、より美しい
三つ編みになっていくことだろう。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2236 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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