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はなとゆめ+猫の本棚
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船名によくある「~丸」。昔の男の子の幼名牛若丸、日吉丸の「丸」の語源に驚く
 「週刊朝日」に寄せられた日本語の語源や表現の疑問に対して作家丸谷才一の回答を収録した作品。

 最近は小説でも、翻訳本でも、動植物をカタカナで表記する場合が、多い。猫をネコとか犬をイヌ、猪をイノシシ、動物もカタカナ表記はどうかなとは思うが、文学作品で植物をカタカナで表記するのは嘆かわしいと、質問者と一緒に丸谷も批判する。私たちは昔から、複雑な態度で植物と付き合ってきたし、そういういろんな関係の累積が文化の伝統としてあるから、あの花に親しみを覚え、その美しさに感動する。だから余韻が生じ、うっとりする。

 カタカナにしてしまうと、この余韻、うっとりが無機物になって一切消える。

「自分は大きなトチの木のあるところまで歩く。・・・・自分の眼に映るもの―麦畑のはずれのケシやカラシの一面に咲き乱れた、荒地の一隅―それだけで十分だ。・・・また、その傍らには、ヒルガオの大きな白い花に覆われた生垣がある。」

 トチは橡、ケシは罌粟、カラシは芥子、ヒルガオは昼顔にして、難しい漢字にはルビをふればよいと丸谷は言う。全くその通りだと思う。

 船は~丸と丸をつけた名前が多い。奈良時代の男の子の名前は「麻呂」とつけるのが流行った。これは、親が自分たちから生まれた子をマロと言ったところから来ている。このマロが時代が下がると、丸に変化した。牛若丸とか日吉丸になるのである。ここから、船にも丸をつけるようになった。

 面白いのはマロや丸はどこからきているのかということ。それが驚くことに万葉集などでは糞のことを「まる」あるいは「まろ」と表していた。だから、便器のことを「おまる」という。

 古代人は、糞を汚いもの、不浄なものとは考えておらず、生命の根源になるもの、力強いものと考えていた。だから、強い名前をつけることで、魔よけ、災厄を避けようとしたのだそうだ。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6229 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. だまし売りNo2019-05-06 13:28

    驚きの由来ですね。

  2. No Image

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