darklyさん
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幻の海洋冒険怪奇尻切れトンボ小説
「紫の雲」に引き続き「幻の作品」シリーズです。解説によると日本で「幻の作品」と呼ばれるものには二つの観点があるそうです。一つは少し前に書評を書いた「紫の雲」のように原書は手に入りやすいものの原文が難解なため長らく邦訳されなかったもの、二つ目は原書が稀覯本でありそもそも入手が困難なもの。そしてこの「メデゥーサ」はそのどちらにも当て嵌まる作品ということです。ちなみに解説者がネットで調べたところこの作品の1929年版の最高値は約13万円だったそうです。
ウィリアムは薄幸な少年時代を過ごしていたが、ミスター・ハクスタブルという紳士と出会い共に出航する。ミスター・ハクスタブルは息子の捜索のため出航しようとしており、息子と似ているということでウィリアムも誘われたのだ。
明らかに怪しい海賊のオバディア・ムーンや奇妙な風貌で不安そうに眼が常に動いている航海士のファルコナーのいかにも何か秘密がありそうな行動、起こる怪現象、現れる奇妙な怪物、他に誰も乗っていない海賊船で一人ビーズに糸を通す作業を夢遊病者のように続け、話しかけても何も反応しない小男ヴァーテンブレックス、そしてメデゥーサとは何なのか。
怪異が起こる前までの航海の様子は「宝島」のようだという評もあるようですが、私はどちらかというと「白鯨」のような印象を受けました。それが徐々に海洋SFホラーのような展開に。まさにラヴクラフトの「インスマウスの影」あるいは「ダゴン」のような世界に。ところが結局、怪現象、怪物の正体、怪しい人たちの正体も全く明らかにならないまま話は終わります。なんだこりゃ!!
確かに海洋冒険譚としての面白さ、ミスター・ハクスタブルに託した作者の哲学、そして怪異のアイデアやその描写など読みごたえはあります。例えばコリン・ウィルソンはこの作品を
「都市と都市」で有名なチャイナ・ミエヴィルはラヴクラフトよりも好きな作家の一人としてヴィシャックを挙げています。そこまではちょっと私は思えませんが。
ちなみに本作品に出てくる「メデゥーサ」は所謂ゴーゴン三姉妹の一人でペルセウスに退治されたメデゥーサとは直接関係はありません。
ウィリアムは薄幸な少年時代を過ごしていたが、ミスター・ハクスタブルという紳士と出会い共に出航する。ミスター・ハクスタブルは息子の捜索のため出航しようとしており、息子と似ているということでウィリアムも誘われたのだ。
明らかに怪しい海賊のオバディア・ムーンや奇妙な風貌で不安そうに眼が常に動いている航海士のファルコナーのいかにも何か秘密がありそうな行動、起こる怪現象、現れる奇妙な怪物、他に誰も乗っていない海賊船で一人ビーズに糸を通す作業を夢遊病者のように続け、話しかけても何も反応しない小男ヴァーテンブレックス、そしてメデゥーサとは何なのか。
怪異が起こる前までの航海の様子は「宝島」のようだという評もあるようですが、私はどちらかというと「白鯨」のような印象を受けました。それが徐々に海洋SFホラーのような展開に。まさにラヴクラフトの「インスマウスの影」あるいは「ダゴン」のような世界に。ところが結局、怪現象、怪物の正体、怪しい人たちの正体も全く明らかにならないまま話は終わります。なんだこりゃ!!
確かに海洋冒険譚としての面白さ、ミスター・ハクスタブルに託した作者の哲学、そして怪異のアイデアやその描写など読みごたえはあります。例えばコリン・ウィルソンはこの作品を
類稀な幻視を描きながら、作品そのものは完全に書ききれなかったのだろうと評しながらも
忘れることができないとも述べています。これは分かる気がします。
「都市と都市」で有名なチャイナ・ミエヴィルはラヴクラフトよりも好きな作家の一人としてヴィシャックを挙げています。そこまではちょっと私は思えませんが。
ちなみに本作品に出てくる「メデゥーサ」は所謂ゴーゴン三姉妹の一人でペルセウスに退治されたメデゥーサとは直接関係はありません。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:書苑新社
 - ページ数:272
 - ISBN:9784883753390
 - 発売日:2019年01月24日
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