くてたまさん
レビュアー:
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「レベッカ」「鳥」のデュ・モーリア、イギリスの作家。1949年の作品。原題は、THE PARASITES、寄生虫。寄生虫が「愛の秘密」になる?
寄生虫は他の動物の体内または表面に棲息する無脊椎動物である。一般生物学的に見て、寄生生活なるものは、生存競争における一種の消極的手段である。
わたしたちを寄生虫と言ったのはマリアの夫チャールズである。
わたしたちとは、マリア、ナイオール、セリアの三人兄弟、実際にはマリアはセリアの異母姉でナイオールはセリアの異父兄だが、マリアとナイオールは血縁ではない。
父がウィーンで女優に関係してマリアが生まれた。女優はすぐに命を落とした。一方母はパリでピアニストとの間でナイオールをもうけたが、ピアニストも早くに命を落としていた。その父と母がロンドンで出会って熱烈に愛し合い結婚した。そしてセリアが誕生した。
父は有名な声楽家で、母は天才的な舞踊家で、ロンドン、パリ、ローマで巡業する生活だった。ナイオール12才の時に、母親がブルターニュの避暑地で事故死し、その後は父子四人暮らしとなった。
マリアとナイオールが学校へ行くようになっても、セリアだけはずっと父親に同行した。
マリアはロンドンで女優の道を目指し、ナイオールはピアノの才能を見出した、父親の友人フリーダとパリで修業した。セリアは絵画の才能があったが、父親の世話役であった。
「わたしたちは絶対に離れないのよ」とマリアが言った。「よくって」
「これまでだって離れたことはなかった。」とナイオールが言った。
「離れていたじゃないの。あんたはパリ。わたしはロンドンにいたんですもの。いやだったわ。わたし、がまんできなかった。だから不幸だった。」
二人の仲は特別だった。義理の姉と弟を超えた仲だが、恋愛とは違った、精神的双生児の仲だった。
マリアは優れた音楽的才能を受け継ぎ、親の七光りもあって順調にイギリス芸能界で知られた女優になった。ウィンダム卿の息子チャールズと結婚し、子供ができたが、女優は続けた。仕事の時はロンドンで一人暮らしをした。
ナイオールも個性的な作曲家として世間に受け入れられた。彼は独身だった。マリアのあるところに影のようにナイオールがあった。著者は二人の情事は描いていない。
ただ、マリアの子供がしゃべってしまった。「ママとナイオールおじちゃんと一緒にお風呂に入ったとき・・・」
ナイオールがマリアという宿主の内部に寄生した寄生虫だったのか、あるいはマリアのための宿主だったのか。
セリアも独身で父親を看取った後は、マリアの子供のめんどうを見ることを生きがいとし、子供のいるチャールズの屋敷に頻繁に出入りした。
チャールズはナイオールの存在に常に嫉妬した。
チャールズが三人を寄生虫と呼んだのは、彼の屋敷で顔をそろえた時だった。マリアが屋敷にいるときはナイオールも滞在した。セリアもいた。
チャールズはこの三人の異常な兄弟愛、特に妻マリアとナイオールとの関係に辟易とした。堪忍袋の緒が切れた。
「お前たちは寄生虫だ。みんな出ていけ。」
寄生虫は成長したときなどに宿主を離れることがある。駆除されずに宿主の体を離れることができたのだろうか。
レヴェッカのようなミステリー性、サスペンス性はない。それを期待して読むと少しがっかりになる。
この小説の中の日本
「スェーデン製でも、日本製でもわたしはかまわない」
食器の話。日本の食器それほど有名だった?
ガーディアン マストリード1000の一冊。
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花の年金生活者です。
勤労者の皆様お仕事ご苦労様です。皆様のお陰で朝からお酒を戴きながら本が読めます。
二年ほど前まではアウトドア派で、山渓の「日本の山1000」を目指していました。五街道まで足を広げたら、歩きすぎで戸塚宿で足萎えになり、525山で中断しています。
代わりに、「ガーディアンマストリード1000」を目標としています。難しい本は読めませんが・・
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