efさん
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歯に衣着せぬ文章に気圧されてしまう14枚の絵画にまつわるエッセイ
以前、どこかで佐藤亜紀さんに関するコメントを読んだことがあります。
書かれていたのは出版業界に身を置く方だったと思いますが、「これだけ才能のある作家なのに今一つ広く読まれないのは、読み手が作者に恐れをなしているからではないか」と冗談めかして書かれていました。
なるほど。
佐藤亜紀さんのエッセイを読むのは初めてだったのですが、いや、その言いっぷり、迫力には気圧されてしまいましたよ。
下手なことを言ったらどやしつけられかねないような(笑)。
この辺りなんでしょうかね、「恐れをなしてしまう」というのは。
私、佐藤亜紀さんの作品には感服しており、大好きなのですが、こういうタイプの方には絶対負ける自信があります(苦笑)。
さて、本作は佐藤亜紀さんが取り上げた14枚の絵画にまつわるエッセイ集です。
美術評論というわけではなく、また、書かれている文章も、もちろんテーマになっている絵画に関連することではありますが、真正面からその絵画を論じてはいません。
その絵画から連想する事柄や、見た時の記憶、その絵画に対する思いからの拡張などなど。
取り上げられている絵画は全て冒頭の口絵でカラー掲載されています。
これはとっても良いところです。
絵画を取り上げている本なのに、肝心の絵画が掲載されていなかったり、モノクロで文章の片隅にちんまりと掲載されている本をよく見かけますがあれはよろしくない。
肝心の絵画はちゃんとカラーで掲載すべきであり、その点本書は大変良いと思いました。
私、他の方がどういう絵画に関心を持っているかを見るのが好きなのです。
なるほどね~とその趣味に納得したり、え?こういう絵が好きだったの?と意外に感じたり。
美術に関する趣味を知るというのはなかなかにエキサイティングなところがあるように思っているのです。
で、佐藤亜紀さんが取り上げた絵画ですが、さもありなんという感じでした。
いや、納得です。
一番苦笑してしまったのは、モンス・デシデリオの『地獄』をテーマにしたエッセイでした。
佐藤さん、モンス・デシデリオから当然のようにピラネージに話が及び、佐藤さん自身、自分の部屋にピラネージのリプリントを2枚飾っている変態であると宣言しているのです。
あの……すいません。
私も、デシデリオの画集とピラネージの画集、しっかり持っています。
さらに佐藤さんはその後に続けてマーヴィン・ピークの 『ゴーメン・ガースト』に触れ、スティアスパイクが城を探索する場面について書いているのです!
いやそのですね……。私、『ゴーメン・ガースト』も大fanで、三部作全部愛読していますし、英BBCが作成した『ゴーメン・ガースト』のドラマDVDも買い込んでおりまして……
あぁ、私も変態認定されるの決まりだな(佐藤亜紀基準)。
ちょっと意外だったのは、佐藤亜紀さん、ラファエル前派はあまり評価されていないんですね。
あと、印象派も。
まぁ、印象派についてはあまり好まないだろうなとは予想できましたが(でも、モネの『睡蓮』を見て思わず涙ぐんだことはあるのだそうです)、ラファエル前派なんて趣味なんじゃないかなと思っていたのでここはちょっと予想外でした。
佐藤亜紀さん、実は美術史の学生だったこともあり、7年間美術史を学んでいたのだそうです。
美術史を学んでいる時は、美術作品を見てもどうしても心から楽しむということができなかったのだそうです。
学究としての眼で見てしまうということなのでしょうかね。
ですから、美術史を学ぶのを終えて2年後にモネの『睡蓮』を見た時に思わず涙ぐんでしまったということなのだそうですよ。
本書もしっかりした知識に裏打ちされた美術エッセイということでしょうか。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
*佐藤亜紀作品/小説
1『バルタザールの遍歴』
2『戦争の法』
3『鏡の影』
4『モンティニーの狼男爵』
5『1809』
6『天使』
7『雲雀』
8『ミノタウロス』
9『激しく、速やかな死』
10『醜聞の作法』
11『金の仔牛』
12『吸血鬼』
13『スウィングしなけりゃ意味がない』
14『黄金列車』
*エッセイ、評論
2『陽気な黙示録』
*共著
『皆殺しブック・レビュー』
書かれていたのは出版業界に身を置く方だったと思いますが、「これだけ才能のある作家なのに今一つ広く読まれないのは、読み手が作者に恐れをなしているからではないか」と冗談めかして書かれていました。
なるほど。
佐藤亜紀さんのエッセイを読むのは初めてだったのですが、いや、その言いっぷり、迫力には気圧されてしまいましたよ。
下手なことを言ったらどやしつけられかねないような(笑)。
この辺りなんでしょうかね、「恐れをなしてしまう」というのは。
私、佐藤亜紀さんの作品には感服しており、大好きなのですが、こういうタイプの方には絶対負ける自信があります(苦笑)。
さて、本作は佐藤亜紀さんが取り上げた14枚の絵画にまつわるエッセイ集です。
美術評論というわけではなく、また、書かれている文章も、もちろんテーマになっている絵画に関連することではありますが、真正面からその絵画を論じてはいません。
その絵画から連想する事柄や、見た時の記憶、その絵画に対する思いからの拡張などなど。
取り上げられている絵画は全て冒頭の口絵でカラー掲載されています。
これはとっても良いところです。
絵画を取り上げている本なのに、肝心の絵画が掲載されていなかったり、モノクロで文章の片隅にちんまりと掲載されている本をよく見かけますがあれはよろしくない。
肝心の絵画はちゃんとカラーで掲載すべきであり、その点本書は大変良いと思いました。
私、他の方がどういう絵画に関心を持っているかを見るのが好きなのです。
なるほどね~とその趣味に納得したり、え?こういう絵が好きだったの?と意外に感じたり。
美術に関する趣味を知るというのはなかなかにエキサイティングなところがあるように思っているのです。
で、佐藤亜紀さんが取り上げた絵画ですが、さもありなんという感じでした。
いや、納得です。
一番苦笑してしまったのは、モンス・デシデリオの『地獄』をテーマにしたエッセイでした。
佐藤さん、モンス・デシデリオから当然のようにピラネージに話が及び、佐藤さん自身、自分の部屋にピラネージのリプリントを2枚飾っている変態であると宣言しているのです。
あの……すいません。
私も、デシデリオの画集とピラネージの画集、しっかり持っています。
さらに佐藤さんはその後に続けてマーヴィン・ピークの 『ゴーメン・ガースト』に触れ、スティアスパイクが城を探索する場面について書いているのです!
いやそのですね……。私、『ゴーメン・ガースト』も大fanで、三部作全部愛読していますし、英BBCが作成した『ゴーメン・ガースト』のドラマDVDも買い込んでおりまして……
あぁ、私も変態認定されるの決まりだな(佐藤亜紀基準)。
ちょっと意外だったのは、佐藤亜紀さん、ラファエル前派はあまり評価されていないんですね。
あと、印象派も。
まぁ、印象派についてはあまり好まないだろうなとは予想できましたが(でも、モネの『睡蓮』を見て思わず涙ぐんだことはあるのだそうです)、ラファエル前派なんて趣味なんじゃないかなと思っていたのでここはちょっと予想外でした。
佐藤亜紀さん、実は美術史の学生だったこともあり、7年間美術史を学んでいたのだそうです。
美術史を学んでいる時は、美術作品を見てもどうしても心から楽しむということができなかったのだそうです。
学究としての眼で見てしまうということなのでしょうかね。
ですから、美術史を学ぶのを終えて2年後にモネの『睡蓮』を見た時に思わず涙ぐんでしまったということなのだそうですよ。
本書もしっかりした知識に裏打ちされた美術エッセイということでしょうか。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
*佐藤亜紀作品/小説
1『バルタザールの遍歴』
2『戦争の法』
3『鏡の影』
4『モンティニーの狼男爵』
5『1809』
6『天使』
7『雲雀』
8『ミノタウロス』
9『激しく、速やかな死』
10『醜聞の作法』
11『金の仔牛』
12『吸血鬼』
13『スウィングしなけりゃ意味がない』
14『黄金列車』
*エッセイ、評論
2『陽気な黙示録』
*共著
『皆殺しブック・レビュー』
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:平凡社
- ページ数:173
- ISBN:9784582286083
- 発売日:1995年06月01日
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